友達としての第一歩―side you― ページ27
ああ、もう!
たった今藤ヶ谷太輔がじゃあね、と手を振って帰って行った扉を恨めしく見つめる。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。
『友達ならいいよ』なんて。
私の何でもない穏やかな毎日を邪魔されるようで、いらいらしていたはずなのに。
さっき図書室で藤ヶ谷太輔に話しかけられたときも確かに嫌悪感丸出しだった、のに。
「どうして本のことが絡むと誰彼かまわず話しちゃうんだろう…」
本が好きで、好きで、宮っちたちと仲良くなる前は一番の親友は本と言ってもいいくらい本が好きだった。
だからなのか、つい本のことを聞かれるといろいろと話してしまいたくなるのだ。
それに。
「……なんか、さみしそうだったしなぁ…」
ゆるくつかまれた腕。
『ねぇ、Aちゃん』
私の名前を呼んだ声はいつもと違ってなんだか自信がなくてか弱い声で。
そのまま図書室のカーテンを閉めに行った私をじっと藤ヶ谷太輔が見ているのに気づいていたけれど見ないふりをしていたのに、最後のカーテンを閉める前にふと見た彼の顔が、なんだかとてもさみしそうに見えたから、つい…。
「まったく、私らしくない……」
ふぅ、とため息をつくのとほぼ同時に玉ちゃんが図書室に迎えに来てくれたから、図書室の鍵を閉めて一緒に学校を後にした。
「ねぇ、A緊張してる?」
「へ?!し、してないよ」
「してるじゃん、どうしたの?」
次の日の朝。
いつも通り朝の図書室で玉ちゃんと宮っちと今日の授業の予習をして、いつも通りに玉ちゃんのクラスの前で玉ちゃんに手を振って。
今日は梅雨なのに晴れてるから屋上でご飯が食べられるね、なんてさっきまでテンションが高いくらいだったのに。
宮っちになんか緊張してる!と言われて必死でごまかしてはいるけれど、指摘通りなんだか朝から緊張している。
きっと原因は、前から歩いてくる明るい茶髪のチャラ男。
いつものように黒髪のお友達とこちらに向かって歩いてくる藤ヶ谷太輔とすれ違う。
なんでもないことなのに藤ヶ谷太輔がこっちを見ていることが何となくわかって思わず顔をあげればばっちりとかち合う視線。
「おはよ、Aちゃん」
にっこりといつも通りに微笑んだ彼は何でもない事のようにまた歩き出す。
その笑顔に緊張していた心臓が一層跳ね上がって、変になりそうだ。
「っ…おはよう、藤ヶ谷…くん」
驚いてこちらを見た彼の顔をまともに見られないまま、宮っちの腕を引っ張るように教室に逃げ込んだ。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時