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「いや、俺としてはずっと握ってくれててよかったんだけど」
生まれてこの方感じたことのない胸がぎゅっとなるような不思議な感じをなんだか取り払いたくていつも通りチャラ目に声をかければ、射殺されそうな眼で睨まれてしまった。
「でもこの本はまじでわかりやすいよ」
これ借りていくね、と言えば貸出カードに記入して借りるのだと言われてカウンターへと戻る。
「貸出期間は2週間…あ、テスト期間に入るから1か月までは借りられる」
「へぇー…知らなかった」
「あと夏休みも長期貸し出ししてるよ」
借りられる冊数もちょっと増えるんだよね、と話すその顔はいつも俺のことを嫌そうに見る顔でも仲良しの奴らといる時の顔でもなくて。
ああ、この子本当に本が好きなんだな。
嬉しそうにきらきらした目でそんなことを話すAちゃんにくすり、と笑いが漏れる。
「……何?」
「いや、Aちゃんって本のことになると俺とも普通に話してくれるんだなって」
「それは……」
少し恥ずかしくなったのか少し赤くなるAちゃんが面白くて、カウンターの前まで椅子を引っ張ってきて向い合せに座る。
「……借りたなら帰って」
「Aちゃんって図書委員?」
「……うん」
「じゃあおすすめ教えてよ」
つれないAちゃんにまた本の話題を出せば、しばらく真剣に悩んで。
「……藤ヶ谷太輔が好きなジャンル知らないし…」
「Aちゃんのおすすめでいいからさ」
っていうかこんなバスケの本まで読んでるなんてすごい読書家だな、と感心して言えばそれは体育のテストの時に読んだから、と小さな答えが返ってくる。
「…え?テスト前にこれで勉強したの?」
「……ポイントだけ抑えれば何とかなるかなって」
「で、テストは?」
「………」
Aちゃんの沈黙がすべての答えを物語っていて、なんだかかわいいなぁ…と無性に頭を撫でたくなって自分自身に驚いて手を止めた。
可愛い?
いままですれ違ってあの子かわいー、っていう『カワイイ』じゃなくて。
一生懸命なところとか。
ちょっと不器用なところとか。
思いがけずそんな話をしてしまって赤くなっているところとか。
そんなところが『可愛い』だなんて。
感じたことのない、感覚だった。
「……今度さ、バスケのテストあったら」
今日のお礼に俺が教えてあげる、と言えば。
「その本でリベンジするからいいって」
「いやいや、体育はとりあえず実践が大事なの!」
な、と言えば悔しそうにAちゃんが黙った。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時