起こさないで―side T― ページ21
「もう!本当に何考えてるんだろ…」
図書室のカウンター。
いつもいない司書用の部屋でお弁当をつつきながらAはぷりぷりと怒っていた。
「まぁまぁ…」
よしよし、とAをなだめて頭を撫でる宮田の手。
明らかに友情だとわかっている彼の行動にまでいらいらするなんて……俺も相当重症だ。
中学生のころの俺の世界には、宮田しかいなかった。
『玉森君てかっこいい』
『でも、とっつきにくいよね』
皆俺がかっこいいっていう。
でも俺が人見知りで仲のいい宮田とくらいしかちゃんと話をしないから、あっという間に離れて行った。
Aに出会ったのはそんな時。
宮田が面白い子がいる、とAと俺を引き合わせたのだ。
Aは俺の顔を見てもかっこいいとは言わなかったし、無理やり宮田が3人でお弁当を食べようと言い出して、俺が一言も話さなかったときも面白くないとは言わなかった。
『ねぇ…俺のこと、いろいろ聞かないの?』
ある日業を煮やした俺が彼女にそう問いかけると、Aは驚いたようにこちらを見て。
そして、笑ったんだ。
『玉森君、聞いてほしい?』
『いや…俺…』
『私もいろいろ聞かれるのは嫌だし…それに必要ないから』
『必要ない?それって…』
俺に興味がないから?といいかけた言葉は彼女の一言で全く見当違いだとわかった。
『友達なんだから、これからゆっくり知り合っていこうよ』
彼女は俺の内面を見てくれる。
そして…俺に勝手に期待して勝手にがっかりしたりしない。
そんなAが玉に見せる可愛い笑顔と飾り気はないけれどまっすぐなその言葉に恋に落ちたのは、それからすぐのことだった。
それから5年。
俺はAとの友達としての関係を壊さず、一番近くで彼女を見つめ続けてきた。
いつかAが本物の恋がなんなのかを知った時に、そばにいるのが俺であればいいとずっと思ってきたのに。
藤ヶ谷太輔。
しつこいくらい毎日毎日彼女にアプローチしてはAの心を引っ掻き回す。
Aは本気で嫌がって、怒って…。
でも、そんなに感情をあらわにするAなんてみたことがなかったから…Aも、気づかないだけで少しずつ藤ヶ谷太輔に惹かれていくんじゃないかって怖かった。
屋上で思い切りにらんだことに、藤ヶ谷太輔は気がついただろうか。
「玉ちゃん?最後のからあげあげる」
にっこり笑うAにありがとうと言ってからあげを頬張る。
今はこんな関係でいい。
だから彼女を、Aを起こさないで。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時