頭の痛い親友に関する一考察―side Y― ページ20
「渉!Aちゃんがいない!!」
昼休み。
4限は体育だった。
これまでの太輔はぎゅじょうが終わった後もサッカーボールで遊んだり、バスケのシュート練習をしたりしていたのに真っ先に更衣室に走っていって、そのまま大急ぎで彼女の教室までやってきたのに、すでに彼女に逃げられた後だった。
「太輔……いい加減本気できらわれるよ?」
あきれたようにそう言ってみても太輔の足は止まらない。
「……しょうがないなぁ」
やれやれと肩をすくめて、俺は太輔の後を追った。
最近、太輔が変だ。
正確にいえばここ10日間。
彼女…河嶋Aとすれ違ったというあの夕方から。
太輔は基本的に女の子に興味がない。
好きになるとは言ってもそれはなんとなくかわいいなぁ…という程度で、いわゆる恋愛には程遠いものだ。
実際、太輔は相手が振り向いた途端に興味を失う。
それはきっと…太輔が本気ではないから。
それなのに彼女に対しては太輔は異常なくらい興味を持って追いかける。
それはきっと…太輔すらも気がついていないけれど…。
「おい、渉!」
屋上へと続く階段の上から太輔に呼ばれてはっとする。
そっと近づけば、太輔といるときには聞いたこともないような彼女の楽しそうな声が聞こえてきて、太輔の顔が少しだけ悔しそうにゆがんだ。
けれど次の瞬間にぃっと楽しそうに笑った太輔はドアを開けて。
「Aちゃん!」
明らかに嫌がられると考えればわかりそうなのに行ってしまった。
案の定露骨に嫌そうな態度を見せた彼女たちはそのまま屋上を出て行ってしまって。
彼女たちが去った屋上で太輔に彼女のことが本気で好きなんじゃないの?と聞いてみたら少し考えた太輔は予想した通りの言葉を返してきた。
「単純な興味だけ」
あんな感じの子って初めてだから、と笑う太輔は何にもわかっていないと思わず深いため息をついてしまった。
単純な興味だけ?
ただ単に今まで出会ったことのないタイプだから?
それだけでかれこれ10日間も一人の女の子を追いかけまわすなんてことがあるのだろうか?
「なんだよ?」
様子がおかしい俺に不審な目を向ける太輔になんでもないと答えるけれど。
「…興味があるってようするにそれが好きってことなんだけどなぁ…これだから恋愛初心者は」
小さな俺のつぶやきは、運良く太輔には聞こえていないようだった。
きっと太輔の好奇心は…太輔自身も気づいていない恋心。
恋愛に慣れているようで鈍感すぎる親友に苦笑いするしかなかった。
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めろんぱん(プロフ) - 由貴さん» コメントありがとうございます!お話はもう少し続きますが、気長におつきあいください(^-^*) (2015年3月15日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
由貴(プロフ) - 面白いです(///ω///)♪ (2015年3月15日 0時) (レス) id: 08fed4a8fe (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ふうたさん» コメントありがとうございます!気分屋なので不定期更新になってしまってすみません(_ _)宮っちは密かにがっつり書いてみたかったのでお兄ちゃん兼友人として満喫中です(^-^*)これからもよろしくお願いします! (2015年2月25日 5時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
ふうた(プロフ) - 前作から読ませていただきました!今回のお話も大好きです。夜に更新されてるかな?て時が1日の癒しの時間です。みやっちみたいな男友達が居たらいいなと思いながら楽しみにしています! (2015年2月24日 23時) (レス) id: b28de98085 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - めーるさん» コメントありがとうございます!一癖もふた癖もある人ばかりなので一筋縄ではいかないお話になりそうですが、楽しんでいただけたらうれしいです(^-^*) (2015年2月4日 23時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2015年1月22日 0時