Hate You!〈F.Taisuke〉

１００％の好奇心 ページ19

「邪魔しないで」

彼女はこちらを見ることもせずにそう告げて屋上から立ち去ってしまった。

「あーあ、だからやめようって言ったじゃん」
ほら嫌われた、と後ろで肩をすくめる渉を見やる。
「でも、面白かった」
「やっぱ太輔って性格最悪」
さいてー、なんて言いながらにゃんちゅうみたいな笑顔を浮かべてるんだから渉だって大概じゃん、とつぶやく。
「ってかさー、太輔にしては珍しいよね」
「へ、何が？」
もうここでお弁当食べちゃおうか、と自作の弁当を広げていた渉がふとこちらを見上げてそんなことを言う。
「うーん、太輔ってこんなに一人の女の子に時間をかけることってないじゃん？」
「そりゃ大抵の子はすぐ俺のこと好きになってくれるからでしょ」
「あー…そういうことか」
なんだ、と残念そうだからなんだよ？と渉の向かいに腰を下ろす。
「いや……俺はさ」
少しこちらを見ていうかどうかを悩んだ後、渉は怒らないでね、と言って。


「太輔が彼女のこと、本気で好きになったのかなって思ってた」


「へ……？」
「あれ、やっぱり違う？」
渉がきょとんとした顔でこちらを見る。
「だから、これまでの女の子とは違う理由なんだって」
「ほら、余計本気で好きになったってことじゃないの？」
にやにやとこちらを見てくる渉に大きなため息が漏れる。

渉はこれまでの女の子と同じように俺がちょっとかわいいって思ったから声をかけてるんだって思ってるけれど、それは違う。
彼女は普通にかわいい、というタイプじゃないし、付き合いたいタイプでもない。
ただ俺に対して向けるその視線が面白かった。
無関心。
嫌悪感。
およそ俺の今までの人生では向けられたことのない視線が面白くて、そのくせ友達と楽しそうにじゃれる彼女とのギャップに興味がわいて。

『好き』だとか『付き合いたい』とかそんな感情ではなくて。
どんな反応するんだろう、とか。
どんな表情をみせるんだろう、とか。
そう、これはただの好奇心。

「単純な興味だけ」
ほら、あんな感じの子って初めてだから、と言えば渉はふーん、とこちらを探るような視線を向ける。
「なんだよ？」
「なんでもなーい」
食べよ食べよ、と言う渉が小さな声で何かを呟いたような気がしたけれど、なんて言ったのか結局わからないままだった。

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