Hate You!〈F.Taisuke〉

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「げ…」
宮っちの小さな、そして嫌そうな声。
そして私の名前を呼んだ振り返らなくてもわかる、この１週間嫌というほど聞いた声。

誰がそこにいるのかなんてもうわかっていた。

「Aちゃんこんなところにいたんだ」
教室に迎えに行ったけどいなかったからさ、探しちゃったとつかつかと私の元へと歩いてきた藤ヶ谷太輔は普通の女の子だったら目がハート形になるんじゃなかろうかというくらい甘い笑顔で私に笑いかける。
「太輔！いきなり走り出すからびっくりしたよー…もう」
そして藤ヶ谷太輔を追いかけてきたのはいつも一緒にいるすらりとしたモデル体型のタイプは違えどこっちもかなりかっこいい部類に入るであろう人物。

「……宮っち、玉ちゃん無視して食べよ」
「う、うん」
「あ…うん」
意地でも藤ヶ谷太輔の方を向きたくなくてそう言えば、宮っちと玉ちゃんはぎこちないながらもうん、とまたお弁当箱に箸を伸ばした。

「ねぇ、そのお弁当Aちゃんが作ったの？」
「……っ…」

ねぇ、と突然宮っちと私の間に顔を出した藤ヶ谷太輔はにっこりとほほ笑んで。

「…邪魔なんだけど」
「俺らも今日からここで一緒にお弁当食べていい？」
「もちろんダメに……「じゃ、よろしく」」
決まってるでしょ、という前に私と宮っちの間にどっかりと座り込んだ藤ヶ谷太輔は当たり前のように私のお弁当に手を伸ばしてから揚げをつまみ上げるとぽいっと口に入れる。
「ちょっ俺のからあげ！」
「うまっ、渉の飯とおんなじくらいうまいよ、これ」
勝手に食べたから揚げがお気に召したらしいチャラ男はもっと食べていい？とこちらを向いて首をかしげる。

宮っちがいて、玉ちゃんがいて。
のんびりした昼休みを過ごす。
そんな当たり前の静かな毎日が目の前の男に壊されてしまうことがとても腹立たしい。
『おはよう』というように『好きだ』という彼の言葉は訳が分からない。
『好き』というのは特別な言葉じゃなんだろうか。
もっと特別で、もっと大切な…。

思えば思うほど、ただ新しいおもちゃを見つけて遊びたいだけの藤ヶ谷太輔が私の毎日を壊していくことが許せなかった。




「宮っち、玉ちゃんほかのところでご飯食べよう」



手早くお弁当箱を手提げに突っ込んでそう言えば、わかっていたよというように２人も立ち上がる。

「ちょ…Aちゃん？」
「教室でならともかく大切な友人との時間を邪魔しないで」

顔も見ずにそう告げて、屋上を後にした。

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