Hate You!〈F.Taisuke〉

２ ページ17

「宮っち、早く！」
図書館で怒りを爆発させたあの日から2日後。
4限の終わりにグラウンドを見れば遠くからでも目立つふわふわの明るい茶髪が見えて、急いで宮っちの腕を引っ張った。
「え、A？」
「窓の外見て！今のうちに移動しちゃおう？」
一瞬戸惑った顔でこちらを見た宮っちも理解してくれたようでお弁当片手に小走りで屋上への階段を上る。


「あ、Aたち来た！」
屋上についてみれば先に授業が終わったらしい玉ちゃんが笑顔でこちらを向いていた。
「最近屋上来てなかったから俺毎日いちごミルク飲んでたんだよ」
玉ちゃんは毎日私たち3人分の飲み物を買ってきてくれる。
その代り、私は玉ちゃんの分もお弁当を作ったり宮っちは玉ちゃんの分のパンを買ってきたりと持ちつ持たれつの関係。
「ごめんね、玉ちゃん」
「いやー、ここ1週間あの藤ヶ谷君から逃げまくってたからねー、A」
「ホント、昼休み中鬼ごっこしてるみたいだったよ」
ふぅ…とため息をつけばよしよし、と大きな玉ちゃんの手が頭の上に乗る。
「じゃあどこでご飯食べてたの？」
「図書カウンターの中でしゃがんでおにぎり食べてた…」
「……それは本当におつかれさまだったね」
玉ちゃんの暖かい手が本当に気持ちよくて猫のように目を細めれば宮っちまで調子に乗って髪の毛をぐちゃぐちゃとかき混ぜてくる。
「…もう！」
やめてよなんて言いながらやっぱりこの3人でいるのが一番好きだとしみじみ思った。
「じゃあお昼食べようか」
おにぎりと大きなお弁当箱を取り出すと玉ちゃんの目がキラキラと輝いた。
小さいころから共働きの両親に少しでも負担をかけさせたくないと始めた料理はなかなか楽しくて、今では母が休みの日以外３食作るのが私の仕事のようになっていた。
今日のおかずは定番の卵焼きとから揚げに、ピーマンの焼きびたし、きんぴらごぼう、ミニトマト。
デザートに缶詰ミカンをたくさん入れて作った牛乳かんは宮っちの分までちゃんとある。
「たこさんウインナーがない……！」
たこさん…と悲しげだった玉ちゃんも、いつものようにお箸を渡せば笑顔になっていただきます！と手を合わせる。
「宮っちも食べていいよ」
「うん、あ、じゃあ俺のおかずもちょっとあげるよ」
そんな会話をしながらお弁当に箸をつけたときだった。





「Aちゃん！」




屋上の錆びた扉がぎぃ…と音を立てて開いたかと思えば、聞き覚えのある、けれどもできれば聞きたくない声が聞こえてきた。

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