Hate You!〈F.Taisuke〉

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「なぁなぁ」
俺の家で我が物顔でくつろぐ渉に今日泊まれよと言えば、しょうがないなーといつものドヤ顔で頷いて。
料理の得意な渉がキッチンで簡単な夕食を作ってくれるのを眺めながら、渉の邪魔にならない程度に話しかける。
「何？」
「あのさぁ…同じ学年で銀縁メガネの女の子って知ってる？」
「…へ？」
「いや、今日ナナちゃんと話してるときにすれ違った子なんだけどさ」
「銀縁メガネだけじゃわかんないって」
そう苦笑する渉にそりゃそうか、と俺も笑う。
「なーんかさ、気になるんだよね」
「……また好きになったの？」
さっき帰り道で真面目な話したばっかなのに…とお母さんモードを発動しようとする渉に慌てて違う違う！と手を振って。
「そもそも顔もちゃんと見てないんだから、好きとかそれ以前の問題だって」
「ふーん、めずらしい」
太輔って大体女の子振る前に好きな子できてるのにね、なんて失礼な言葉がなんだか渉らしくて笑ってしまった。


渉の作ったご飯を2人で食べて、交替でシャワーを浴びて。
弟たちの分まで作ってくれていた夕食にラップをかけて2人で俺の部屋に上がる。
「太輔、明日の予習しよ？」
「えー…寝ようよ」
男同士で寝たって十分なくらい広いダブルベッドの上にパジャマがわりのスウェットを置きながらそう言えば、今度こそお母さんモードを発動した渉に無理やり机に座らされて。
「いっつもテストのときぎゃーぎゃー言ってるんだから、今日くらいちゃんとやんなよ」
「う……」
「1時間でいいから集中すること！」
「……へーい」
「俺はこっちのテーブル借りるね」
そう言っててきぱきと鞄の中から教科書を出す渉と対照的にのろのろと鞄を開ける俺。
あ、そう言えば明日英語があたりそうなんだっけ…と思って英語の教科書を開いては見るけれどちんぷんかんぷんすぎてすぐに集中力なんてなくなってしまう。
ちらりと渉に目をやれば真面目に数学を予習しているようだし…うーん、つまんない。
勉強机に頬杖をついて今日のナナちゃんのことを思い出そうとする。
それなのに。



夕日に反射する眼鏡のフレーム。
一切感情のない言葉。
うずたかく積まれた雑誌。



涙をためた目でこちらを見ていたナナちゃんよりもなんでか彼女の事が気になって。
でもそれは今までみたいな恋愛っぽい感情ではなくて、今までかかわったことのない世界の住人がいたという驚きと少しだけ関わってみたいという興味、ただそれだけだった。

初めて交わした言葉→←知らない彼女　１

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