Hate You!〈F.Taisuke〉

知らない彼女　１ ページ12

結局階段の踊り場で一発ナナちゃんにひっぱたかれて、少し赤くはれた頬のまま校門で待ってくれている渉のところまで歩く。
「あー、また男ぶり上がってる」
笑いをこらえきれなくてぷっと吹き出した渉にうるせーと返したのは、なんだか毎回毎回変わらないことをしている自分がどうしようもなく子供っぽく見えたから。
「で、ちゃんと別れたの？」
「あ、うん」
見ての通り、と言えば刺されなくて安心したなんて、本気か冗談かわからない言葉が返ってくる。
「でも結局今回も1週間くらいしか持たなかったね」
「そうだね、やっぱ飽きちゃって」
俺女の子と付き合わない方がいいのかなぁ…とつぶやけば、女の子のためを思ったらそうだろうね、と冷たい言葉。
「渉ひでー」
「だってそうでしょ？今のままの太輔じゃ女の子を幸せにはできないじゃん」
「今のまま？」
「そうそう、それこそ本気で恋愛でもしなきゃ変わらないんじゃない？」
「だから、俺は本気だって」
好きになるときは真剣だよ、といつも通り笑えば、立ち止まって少し考えるそぶりを見せる渉。
「なんだよ？」
「うーん、太輔ってさたぶん本当の恋愛はしたことなんじゃないかな」
「……どういうこと？」
渉に合わせて立ち止まった俺に向かって渉はしょうがないなぁ…というように笑って。


「太輔さ、自分のめちゃくちゃかっこ悪いところをさらけ出してもどうしても誰かを手に入れたいって思ったことある？」
「……どうしても……？」
「うん、なりふり構わず手にいれたくて、その子がほかの子と話してるだけでいらいらしたり、その子が笑っただけで幸せになったり……そんな気持ち」


かっこ悪いところをさらけ出す？
―だってそんなことしたら、嫌われるじゃん

なりふり構わず？
―そんなことしたって、きっと手に入れたら俺も冷めるしその関係は一生ものじゃないじゃん

その子のことで俺が振り回される？
―そんなこと、ありっこないじゃん



「ないな」
「だと思った」
「っていうか、一生ないな」
鼻で笑えばまったくもう…といいながらにゃんちゅうみたいに笑う渉と目が合って。

「今日遊びに来る？」
「今日も親御さん、遅いの？」
あー、会議じゃね？と気のない返事をすれば、太輔はさみしがり屋だな、と俺より少しだけ高い目線からぽんぽんと子供のように頭を撫でらて。
渉のしている腕時計がきらりと夕日に反射して、その瞬間にさっき階段ですれ違った名前も知らない彼女のことをなんでか思い出した。

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