8 ページ8
「この道、全然変わんないだろ」
「そうですね!懐かしい…」
こうして暗くなってからここを河嶋を歩くのは初めてで年甲斐もなく緊張する。
「…よく『みっくん』って呼んで怒られましたね」
「はは、いっつもおんなじこと言ってたよな」
学校では先生って呼ぶからいいんですーってさ、と茶化すように言えば恥ずかしそうに伏せられた瞳。
そういえば、学校で河嶋は一度も『みっくん』とは呼ばなかったななんて今更そんなことまで思い出して。
どんどん時間がまき戻っていくような不思議な感覚に襲われる。
「……今日、来てよかった」
どうしてももう一回だけ先生に会いたかったんです、という河嶋に思わず立ち止まる。
もう一回だけ?
もう会えないってこと?
「どういう…こと?」
恐る恐るそう聞けば、河嶋も立ち止まって俺の顔を見ていた。
「これで…やっとあきらめられそうです」
すっごく長い片思い、と笑う河嶋の顔は、笑顔なのに少し苦しそうで…。
くしゃりとゆがんだ瞬間にこらえきれずに涙が河嶋の頬を流れた。
「……っ」
その涙を見て思わずぎゅっと河嶋を抱きしめるとこわばる身体。
「…すみません、みっともないところを…」
そんなことを言いながらなんとか離れようとする河嶋を腕の中に閉じ込めて暗闇でも真っ赤になっているとわかる耳元で囁く。
「…文化祭、誰と回りたかった?」
「…っそれ…っは…」
「俺は…河嶋と回りたかったよ」
何で同級生じゃねぇんだろうって思った、とずっと思っていたことをこぼせばぴくり、と腕の中で震える小さな身体。
「こうやって一緒に通学して、お前の笑顔を見て、それで満足してたつもり…だったんだけど」
「……せん…せ」
「……片想い、終わらせなきゃダメ?」
暗闇の中でこちらを見る河嶋が愛しそうに俺を見るから。
年の差とか。
教師だとか。
今まで悩んでいたことはどうでもよく思えて。
「A、好き」
ずっと好きだった、と言えばまたその大きな瞳から流れる涙。
その涙を指ですくえば自然と目が合って。
「……せんせい、好き」
「こんな時まで先生って呼ぶなよ…」
頬を撫でて顔を近づければ、小さな声でひろみつ…とつぶやくその唇。
目を閉じてその唇にそっとキスをすると、あの4年前の夕焼けみたいに目の奥が真っ赤に染まったような気がして。
「…4年前から、ずっとこうしたかった」
終わってしまったはずの恋は心の中で静かにずっと燃えていて。
今やっと、腕の中に。
111人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めろんぱん(プロフ) - mizukitama0810さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。まだあと3人分ありますのでお楽しみに! (2014年12月8日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
mizukitama0810(プロフ) - 楽しみやで! (2014年12月8日 0時) (レス) id: fa4a017977 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - momo☆さん» いつも遊びに来てくださってありがとうございます!「近くて遠い」をほったらかしてこっちに浮気してます(^-^;)今後は横尾さん、ガヤさんと続いていきますのでお楽しみに☆ (2014年12月6日 4時) (レス) id: f54a071e3d (このIDを非表示/違反報告)
momo☆(プロフ) - 遅くなりましたが新作おめでとうございます!ドキドキきゅんきゅんさせて貰ってます♪まだのメンバーのも楽しみ\(^o^)/ (2014年12月5日 8時) (レス) id: ac44057ad7 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - むちゃちゃさん» コメントありがとうございます!今までのお話も読んでくださっていたなんてうれしいです。やっぱりあのね帳ありましたよね?私の友人はなにそれ?状態でしたが(^-^;)これからもマイペース更新かと思いますが頑張ります!! (2014年12月1日 3時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めろんぱん | 作成日時:2014年11月29日 2時