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それからの私と言えば。
『大好きです』
提出するノートや小テストの片隅に初めと同じその一言を何度も何度も書いた。
けれど先生も見ているのかいないのか、今までと変わりなく話すこともなくしばらく時が過ぎた。
「化政文化では出版がかなり盛んになったんだけど、例えば滑稽本っていういろんな人に読まれた本なんかもたくさん出て…有名は作者としてはじゅっぺんちゃいっきゅとか」
「……?」
クラス中がん?と首をひねる。
…そりゃ『じゅっぺんちゃいっきゅ』じゃ無理もない。
「えー…こほん、十返舎一九とか」
さすがに噛むから『東海道中膝栗毛』は言わなかったのかな、なんて。
相変わらず噛み噛みな先生をまっすぐに見れないから壁にした教科書からちらりと目を覗かせて、少しだけ恥ずかしそうな先生を盗み見た。
習っていた単元も江戸文化からペリー来航に、そして倒幕だとか攘夷だとかそんな単元に入ろうかというとき。
いつものようにノートの片隅に書いた『大好きです』の文字の下に癖のある、とてもきれいとは言えないような字で小さく何かが書き込まれている。
『新手のジョーク?』
返ってきた言葉はやっぱり私の気持ちを比定するものだったけれど、ようやく先生が反応を返してくれたことに思わず笑顔になる。
「あれ?どうかした?」
隣の子にそう聞かれたけれど、とても本当のことは言えなくて曖昧に笑ってごまかした。
それからも小テストやノートに書く同じ言葉。
それに対しての返事は、最初とほとんど変わらないものばかりだったけれど。
ある日の小テスト。
そこに書かれていた言葉は…。
『なんで?』
初めて横尾先生から軽くあしらわれる以外の返事が来て、いつもよりも乱暴に書かれたその文字すらすごく愛しかった。
それからというもの、横尾先生と私の間で奇妙なやり取りが続いている。
『何で俺なの?』
―先生、だからです
『答えになってない』
―全部大好きですよ
『全部って?』
―顔も、性格も
『俺、性格悪いよ』
―ただ優しい人より厳しい人の方がいいと思います
『かっこよくないし』
―私は、好きですよ
半ば交換日記と化したそのやり取りは人とかかわるのが得意でないはずの私にとってもなんだかすごく楽しくて。
『…いつまで続けるの?しつこいよ』
―きっと、ずっとです
好きな小説の一節のようだと思いながら返したその返信は。
『放課後、準備室に』
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めろんぱん(プロフ) - mizukitama0810さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。まだあと3人分ありますのでお楽しみに! (2014年12月8日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
mizukitama0810(プロフ) - 楽しみやで! (2014年12月8日 0時) (レス) id: fa4a017977 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - momo☆さん» いつも遊びに来てくださってありがとうございます!「近くて遠い」をほったらかしてこっちに浮気してます(^-^;)今後は横尾さん、ガヤさんと続いていきますのでお楽しみに☆ (2014年12月6日 4時) (レス) id: f54a071e3d (このIDを非表示/違反報告)
momo☆(プロフ) - 遅くなりましたが新作おめでとうございます!ドキドキきゅんきゅんさせて貰ってます♪まだのメンバーのも楽しみ\(^o^)/ (2014年12月5日 8時) (レス) id: ac44057ad7 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - むちゃちゃさん» コメントありがとうございます!今までのお話も読んでくださっていたなんてうれしいです。やっぱりあのね帳ありましたよね?私の友人はなにそれ?状態でしたが(^-^;)これからもマイペース更新かと思いますが頑張ります!! (2014年12月1日 3時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2014年11月29日 2時