先生、あのね？

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「…っあ…あのっ」
職員室の手前の方の机でパソコンに向かう横尾先生に意を決して声をかければああ…と先生が振り向いて。
近くで見ると先生のかっこよさが余計にわかって、恥ずかしくなって下を向く。
「ちょっと移動しようか」
「あ、はい」
先生について職員室を出て少し歩くと、社会科準備室と書かれた部屋の前についた。
中のソファーに腰を下ろすとおもむろに先生が話し始める。
「えっと…そんな緊張しなくて大丈夫だから」
まぁいきなり呼び出されたら無理だよね、なんていいながら先生が出してきたのは、まぎれもなくさっき私が提出したノートだった。
「すげぇよく書けてたよ、予習までしてあってちゃんと勉強してあるノートだった」
「あ…ありがとうございます」
まさか先生から直々にそんな言葉が聞けるとは思わずに驚きながらもそう言えば、先生もさっきよりにっこりと笑ってくれて。
やっぱり笑顔は可愛いなぁ…なんて本人を前にそんなことばかり思っていた。

「で、ノート自体はすごくよかったんだけどさ」
「はい？」

「これ、何？」

先生の細くて綺麗な指がノートの端っこをとんとんと叩くからそこにかかれた文字を身を乗り出して見れば…。


『大好きです』


消したつもりだったのに…消えてなかったみたいだ。
週末に思わず書いたその文字がまさか本人のところにまで届いてしまうなんて、とうつむいてしまう。
「……っあのっ…その…」
「…河嶋ってさ、いじめられてたりする？」
「…へ？」
なんて言い訳しよう…とぐるぐる悩んでいるのに横尾先生からは思いがけないことを言われて思わず先生の方を向けば。
「いや、俺のこと好きだなんてありえないから罰ゲームか何かなのかと思って」
河嶋わりかしおとなしい方だから、なんかあったらって…添えで呼んだんだよという先生の目は優しい。


でも。
でも。
私の全力の『好き』を罰ゲームかいじめだなんて。
私の大好きな横尾先生を先生自身がそんな風に言ってしまうなんて。


気づけば視界が少し滲んでいて鼻の奥がツン…として。
ああ、泣きそうなんて思いながら横尾先生の方を見れば先生もぎょっとしたようにこちらを見て。
「え、ホント大丈夫か？先生でよければ相談に…」
「っ大丈夫です！」
伸ばされた先生の手を思い切り振り払って。


「…っ私は…っ私はちゃんと先生が好きなのにっ…この気持ちは罰ゲームなんかじゃありません！」


そう言い切ると唖然とする横尾先生の顔なんて見れずに部屋を飛び出した。

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