先生、あのね？

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冬。
ただでさえ寒がりなのに席替えで窓際になってしまった私はぶるぶると震えながらコートをひざ掛け替わりにして暖をとる。

「ふぅ……」

一向にあたる気配のない退屈な授業は寝るに限ると机に突っ伏す。
頭の上から聞こえてくるのは宮田の声。

あの、廊下で宮田とすれ違った日からもう1か月。
宮田は一切私に絡んでこなくなった。
授業中にしつこいくらいに私に絡むこともなくなって、それどころか一切私の方を見ることもなくなった。
もちろん廊下ですれ違った時にも以前だったら『河嶋さん今日も可愛いね!』なんて歯の浮くようなセリフを汗をかきながら言ってきていたのに、今ではすっと通り過ぎるだけ。
それだけではなくて、どことなくオタク話も授業中にすることがなくなったような気がする。

最初の1週間はクラスがざわざわしていた。
面と向かってとうとうみやっちを振ったのか！なんて言ってくる子もいた。
次の1週間はどこか触れてはいけないような、少し気まずい空気が流れていた。
それも1か月たてば落ち着いて。
最初は『河嶋さんがみやっちをこっぴどく振ったらしい』とか、『みやっちがとうとう3次元には見切りをつけたらしい』とか好き勝手なうわさが流れたものだが、もともと私がそう言う噂に反応しない性質だからか単に皆飽きただけなのか、すっかり何も言われなくなった。
ウワサが消えると同時に宮田が女の子に囲まれるのをよく見るようになった。
廊下で女の子がこれ見よがしに胸を押し付けて宮田の腕に腕を絡ませてる姿なんかが妙に目について。
『みやっちかっこいいよね！』
『ええーそんなことないよー』
『かっこいいよー！笑顔が王子様みたい』
『たしかに！優しいし大好きー！』
なんて頭のネジゆるんでんじゃないの？って会話が聞こえてきてなんだかげっそりすることもある。
うげー…という顔をする私を見て、なんだかマイコは面白そうに笑ってくるけれどその真意がよくわからなくて首をひねる。
『取られたって思ってんじゃないの？』
『取られた？まっさかー』
望んでた穏やかな日々をやっと手に入れられて大満足といえば、ふーん、と気のない返事が返ってきた。


ただ…宮田の癖に女の子にもててるとかなんかムカつく、だけなんだから。


今日もきっと宮田は私がまるで一人だけ透明になってしまったみたいに、こちらを見ずに授業をするんだろうと完全に机に突っ伏して、本気で寝てしまうことにした。

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