先生、あのね？

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「裕太くんいるー？」
「あ、こら一応先生って呼びなさい」
教室を出てまっすぐ向かったのは英語科準備室。
一応英語の教材なんかが所せましと置いてあるけれど、英語の先生は大抵職員室にいるから、この部屋にいるのは私の目当ての人だけだということはわかりきっている。
英語科教員、玉森裕太。
ふわふわなパーマとふわふわした笑顔。
それなのに身長は意外に高いしスーツもびしっと着こなしちゃうから人気もある。
そんな彼は、私の前ではちょっとだけ意地悪で…ほかの人よりも少しだけ優しい。

「いいじゃん、裕太くんしかいないし」
「ったく、口の減らないAちゃんですねー」
あと10分で休み終わっちゃうのにめずらしいね、といいながら優しく笑う裕太くんに抱きつけば、よしよしと頭を撫でてくれる。
「今日もいろいろあったの？」
「あったの！」
「宮田もいい加減Aちゃん攻略法を思いつけばいいのにね」
「攻略されたくないの！」
そう訴えれば案外Aちゃんも楽しいのかと思っていた、なんてほら、ちょっと意地悪な笑顔。
「…違うもん」
「ホントにー？」
「だって宮田いっつも私ばっかりあててさ」
いつもへらへらして好き好きって言われても困ると言えば、まぁそこが宮田のいいところでもあるからと宮田の肩を持つ裕太くんにいらっとして。

「ゆーたくん、キライ」
「あ！嘘嘘！」
慌てて私の顔を覗き込む裕太君に少し拗ねた顔をしてみせれば、よしよしと抱きしめる腕が強くなる。
「宮田のせいで減ったHP回復させてよ」
「りょーかい」

そのまま裕太君の背中に手をまわそうとした。








「あれ？お邪魔だったかな」
からからと急にドアが開いてびくっとしてドアの方を向けば、諸悪の根源の宮田がそこに立っていた。
もう、抱きしめ合っちゃって、なんて言いながらしっかり準備室に入ってきてドアを閉めた宮田をきっと睨んだ。
「宮田、ノックしろよ」
「ははは、ごめんごめん」
玉次授業ないだろ？コーヒーでもと思って、とコーヒーポット片手にやってきたらしい。
「河嶋さんは…」
「授業ですから」
冷たくそう言えば、少し困った笑顔で私を見つめる宮田とそれを面白そうに見ている裕太くん。
「じゃ、また」
しっかり裕太くんにだけ手を振ってドアを思い切り閉めれば、中から河嶋さんに手、振られた…！と宮田のとんちんかんな叫びが聞こえて思わずドアをけりつけたくなる。


「…ホント、邪魔」


聞こえないようにつぶやいて仕方なく授業に戻った。

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