7 ページ16
「…A?」
真っ暗な部屋にそう呼びかけても返事がない。
手探りで部屋のスイッチを探すと、もぞもぞと動く音がして小さな声で電気つけないで…と言った。
仕方なくその暗い部屋に足を踏み入れて後ろ手でドアを閉める。
外の明かりだけではぼんやりしかわからない部屋の中、俺のベッドに仰向けに寝転がったAの制服から伸びる足がやけに白く浮いて見えた。
「……っ…健ちゃん」
「A、泣いてる?」
暗闇でAが顔を覆ったのが見えた。
小さいころからいつも見てきた笑顔。
Aはよく泣くから、その泣き顔だって散々見てきたはず。
それなのに。
その震える肩を見てぎゅっと心臓が締め付けられるのはなんでだろう。
「A、どうした?」
部屋は暗いままベッドに近づいてベッドの下に座り込む。
そのままAの頭を優しくなでれば、小さな塊がいつものように俺に飛びついてくるから。
「…なんだよ、甘えんぼ」
いつものようにしょうがないなぁ…という口調でそれでもAを抱きしめる手は緩めない。
「…けんちゃん…」
「ん?」
「健ちゃんだぁ…」
そのままぎゅっと背中に回った腕。
もう…と背中をポンポンとすれば、お酒臭い…と離れる身体。
「ってかなんでこんな時間に俺んちきたの?」
もう遅いから帰らなきゃでしょ?と言えばうるうるした目でこちらをきっとにらむけれど、正直全然怖くない。
ほら、言ってみ?と促せばしぶしぶと言った様子で口を開く。
「…健ちゃん女子にすごい人気あるから…なんか取られちゃったみたいで」
「取られちゃったって…Aこそだろ?」
思わずそう言い返せばえ?と腕の中で首をかしげるA。
「Aだって中島と仲良くしてるじゃん。ずっと俺…っ」
“俺だけのものだとおもってたのに”
俺が言おうとしていた言葉に自分で驚いて言葉を止めれば、Aが何?という瞳でこちらを見ている。
うるんだ瞳。
半開きの唇。
…いつまでも子供だと思ってたのに。
妹、だと思ってたのに。
『可愛くなったなぁ』
『誰かに取られちゃったりして?』
二階堂の言葉が頭をぐるぐるとまわる。
「俺、Aのこと好き、みたい」
ぽつりとそう呟けば、Aはへ?と目をぱちぱちさせて。
「…私も好きって言ってるじゃん」
「いや、たぶんそう言う好きじゃなくて」
Aの『好き』はお兄ちゃんへの『好き』だろ?と、頬に手をそえて。
「…こういう、好き」
そのぽってりした唇をそっとふさいだ。
111人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めろんぱん(プロフ) - mizukitama0810さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。まだあと3人分ありますのでお楽しみに! (2014年12月8日 2時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
mizukitama0810(プロフ) - 楽しみやで! (2014年12月8日 0時) (レス) id: fa4a017977 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - momo☆さん» いつも遊びに来てくださってありがとうございます!「近くて遠い」をほったらかしてこっちに浮気してます(^-^;)今後は横尾さん、ガヤさんと続いていきますのでお楽しみに☆ (2014年12月6日 4時) (レス) id: f54a071e3d (このIDを非表示/違反報告)
momo☆(プロフ) - 遅くなりましたが新作おめでとうございます!ドキドキきゅんきゅんさせて貰ってます♪まだのメンバーのも楽しみ\(^o^)/ (2014年12月5日 8時) (レス) id: ac44057ad7 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - むちゃちゃさん» コメントありがとうございます!今までのお話も読んでくださっていたなんてうれしいです。やっぱりあのね帳ありましたよね?私の友人はなにそれ?状態でしたが(^-^;)これからもマイペース更新かと思いますが頑張ります!! (2014年12月1日 3時) (レス) id: ce7d0548e5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めろんぱん | 作成日時:2014年11月29日 2時