先生、あのね？

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「相変わらずモテモテだな」
実習生控室で冷かしてくる二階堂を軽くあしらって次の授業の準備を始める。
「千賀ぁー」
「なんだよー、もう」
「知ってた？今日皆で飲みに行くって」
ほら、高校免許だけの奴ら今日で最後だし、という二階堂。
「まじ？」
「あれだって、櫻井先生とかも来てくれるってさ」
「まじか！じゃあなんとしても終わらせなきゃだな」
いつも時間ぎりぎりになってしまう分今日は余裕を持たせなければとパソコンを開いた。









「じゃあ！」
「かんぱーい！」
画工の近くの居酒屋で飲む生ビールはめちゃくちゃおいしくて喉をごくごくと鳴らしてジョッキの半分くらいを一気に流し込む。
「実習どうだ？」
櫻井先生にそう聞かれてすごく充実してます！と答えると、横から二階堂が口を挟んでくる。
「こいつったらめちゃくちゃモテてるんですよ」
「おまっ…バカ！」
「あー、俺もそうだったなぁ」
なつかしいなぁ…なんて櫻井先生が言う。
たしかに櫻井先生はかっこいいし頭もいいからさぞ女の子にもてただろうなぁ…と思ってしみじみと見つめると、俺の視線に気づいた櫻井先生がくすりと笑った。
「いや、今のうちだよ」
そのうちさ、ホントに教師になったらテストとか補習とかもしなきゃなんなくて、先生きらーいなんて言われるんだから、と笑う櫻井先生にその通りだよなと頷いて。
「でも今年の奴らは皆すごく頑張ってると思うよ」
「ホントですか！」
「うん、ホントホント」
あと1週間しかないけどよろしく頼むな、と肩を叩かれてなんだか誇らしい気持ちになった。







「じゃあ、またこのメンバーで飲もうな」
「だな！」
「お前らあと1週間がんばれよ」
今日で終わりの奴らともそんな会話をして電車に乗り込む。
ガタンガタン、と揺られながらあっという間だったなぁ…と思って。

「…そういや、ずいぶんAと話してないなぁ」

週末だし家にでも遊びに行ってやるか、と手のかかる妹を持った兄の気持ちで電車を降りる。



「ただいまー」



すっかり遅くなってしまったと家に帰れば手を拭きながら母さんが出てきて。
「健永、Aちゃん来てるわよ」
「え、A？」
「ええ、部屋で待ってるから」
遅い時間になっちゃったこと、ちゃんと謝りなさいよという母さんの声を背に階段を上る。

「A？」

そう言って慣れた俺の部屋のドアを開ければ、中は真っ暗で。

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