先生、あのね？

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次の日。

「教育実習生の千賀です！短い間ですが精いっぱい頑張ります」

仲よくしてくださいね！と頭を下げればぱちぱちと拍手が聞こえた。
頭を下げながら思わずにやけてしまった口元をあわてて引き締める。
…Aの顔、見ものだったなぁなんて。
Aのクラスの担当になったものの、なんだかおもしろそうだから昨日Aには黙っていたら…ハトが豆鉄砲くらったような…ってあんな顔を言うんだろうな。
ぽかーんってしちゃって、口なんてめちゃくちゃ開いてて。

「千賀先生はホームルームとか掃除とかいろいろ皆としてもらうと思うから」

授業とかもすると思うし皆いうことちゃんと聞くんだぞ、という櫻井先生の言葉。
そのまま授業まで時間が少しあるからクラスの子と話をする時間がありそうだ。
「千賀先生超かっこいいですね！」
「なんかハーフっぽい！」
「ハーフですか？」
「いや…彫は深いみたいだけど普通の日本人だよ」
「えー！意外！」
「大学どこですか？」
「学部は？」
「先生高校に戻ってくるの？」
櫻井先生がいなくなった途端に女の子たちに取り囲まれて質問攻めにあう。
俺が高校時代もそうだったけど…なんていうか教育実習生バブルがすごい。
生徒にとっても少しだけ非日常というか、いつもと違う年の近い人間が入ってくるわけで…人生一番のモテ期到来の気分だ。
…ま、俺も高校時代ちょっとドキッとしたりもしたし、こんなもんだよね。
「先生、お昼ってどっか食べに行かれるんですか？」
「あ、ううん、お弁当持ってきてるけど」
「え！彼女？」
「先生彼女いるの？」
「いやいや…普通に母親が作った奴だけど」
思わず苦笑いでそう答えれば、女の子たちはにっこり笑って。
「じゃあ先生お昼一緒に食べよう？」
「ええ？それはなんか悪いから…」
そう言いながら横目でAを探す。
Aのことだからこんな時に一番に俺に飛びついてきて「健ちゃんひどーい！」ってほっぺたを膨らませるんだろうなって思ってた。
「ねぇねぇ先生」
「食べよ？ね？」
「あ…うん」
「じゃあ約束ね！」
絶対だからね！というその子たちに思わず頷いて。
目の端でようやく見つけたAは、俺の方も見ずに机に突っ伏してしまった。

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