先生、あのね？

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Aは俺の近所に住む幼馴染。
母さんとAのお母さんが学生のころから仲が良かったとかで小さいころから当たり前のように一緒に育ってきた。
俺も弟はいたけれど妹はいなかったからなんだかんだで柔らかくってかわいくっていっつも俺の後をついて歩くAをかわいがっていた。

『健ちゃん！』
『なんだよー』
『健ちゃん、ぎゅーして？』
『…しょうがないなぁ』

おいで？と腕を広げると満面の笑みで抱きついてくるA。
泣いていても怒っていても凹んでいても(、俺がAを抱きしめて頭をぽんぽんすれば、それだけでAはいつも笑顔になったし、これからもそんな関係がずっと続くんだろうな、なんて漠然といつも考えていた。

大学に入ってサークルで忙しくなったときにすねて１か月も口をきいてくれなかったこと。
高校に入ったAが俺のマネをしてゆるいパーマをかけて俺の前で笑ってみせたこと。
どうしてもおそろいのピアスがしたいから、一緒にお医者さんに行って半泣きでピアスを開けたこと。

元々素直になれないこの性格と口が悪いせいで冷たく思われることもあったけれど、それでもAはいつも隣で笑っていた。









「おいっ千賀！」
「…っごめん」
二階堂に言われて昔のことをついつい思い出してしまっていたけれど、そう言えば今日は教育実習の初日で。
校長先生や教頭先生のあいさつのあとは細かい注意事項を教育実習担当の先生から説明される。
「実習とはいえ、生徒はその範囲もテストや受験で出るわけですから…慣れないからいいやではなくて慣れないけど精いっぱいやろうという気持ちでおねがいします」
そう言われて自然と背筋が伸びる。
「あと…生徒と不用意に仲良くならないよう、お願いします」
大人としての自覚と、教師としての自覚を持ってください、と言われて説明会は終わった。
「配布した資料に担当クラスと指導教諭が書かれてますからまずはその先生にあいさつに行ってください」
「千賀どこ？」
「んー…２年生だな」
「俺３年」
受験生とかピリピリしてそうで怖いな…なんて弱気になる二階堂の肩を叩いて職員室に行く。
「櫻井先生、よろしくお願いします」
「おおー千賀、頑張れよ」

何でも聞いてくれよな、と笑顔で言ってくださる櫻井先生からクラス名簿を貰う。
俺の担当クラス…２−４組の名簿を貰って順番に見ていくと、その中にAを見つけて少しだけうれしいようなくすぐったいような不思議な感覚がした。

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