【QK】小瓶を覗く (ページ19)

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8.5 ただいまの音_izw ページ19

日常が帰ってきた。

｢ただいま｣と言えば｢おかえり｣と迎えてくれる、そんな日常。

｢たーくしくん！｣
そう言ってAは俺がいたソファーの隣に腰掛けた。
｢ずっと恥ずかしくて言えなかったんだけどさ、｣
頬を赤らめながらこちらを見た。抱き締めたい衝動は、なんとか飲み込んだ。

｢あの時の続きね｣

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ラヴェルの話をした後、Aは泣きながら話をしてくれた。

｢俺のことを探していた…？｣
｢そう、あの、動画…見て惚れた｣

｢ほんとに困らせるだけだと思うんですでも…今さっき演奏してくれた曲、私のスマホに歌詞が入ってた｣

時折嗚咽を漏らしながら俺の胸の中で小さくなって泣く彼女の話を、黙って聞いていた。

なんだ、知ってたんだ。
何か鎖のようなものが外れた気がした。

｢そうだよ。Aが作ってくれた曲。俺の…大好きなAが｣

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｢その、本当に恥ずかしいから笑ってね｣
｢まぁ内容によるな｣

依然顔の赤いまま、Aは深呼吸して続けた。

｢やっぱり記憶が無くても……拓司くんのことを好きに、なってた｣

｢……はっ、かわい｣
笑えない。可愛すぎて本当に笑えない。
俺がぽかんとしているとAの頬はより赤みを帯びてきて、

｢もー！言わなかったら良かった！恥ずかしい思いしただけじゃ…んっ｣

なんて怒りだしたからキスをして口を塞いでやった。

｢愛してる｣
耳元で呟くと、Aはうわぁと楽しそうに笑った。

何でもない日常が、幸せな日常が戻ってきた。