かくりよの宿飯 津場木葵の姉2

59話 葵サイド ページ11

奥の部屋へ行くと

そこは従業員の休憩室の

ようになっており

今は少し散らかっている

銀次さんはタンスから抹茶色の地味な着物と

白い前掛けを取り出していた

銀次「これで良いですか？」

葵「ええ、ありがとう
このワンピース姿だとどうしても
浮いてしまって
若女将にもこっぴどく言われてしまったわ」

銀次「あはは
お涼さんはまあ、そうでしょうね・・・」

『似合ってあるがなんせ隠世では
皆着物じゃからのぅ』

銀次さんは曖昧な物言いだ

Aさんははっきり言う

そして私が何かを言う前に

そそくさと二人は部屋を出て行く

この場で私は

先ほど銀次さんが

手渡ししてくれた着物に着替えた

着物の着方は心得ている

何しろ、祖父が何度も教えてくれたから

祖父は私がこういう事態になる事を

最初からわかっていたのだろうか・・・

思い出して、少しもの悲しくなった

ただ、着物を着終えてから

料理するには髪が邪魔だなと思い至る

どこかに紐でもあれば

髪をくくる事ができるのに

60話 貴女サイド→←58話 葵サイド

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す