保健室の。：赤 (ページ19)

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1週間という時間は、長いようで短い。
気がつけば今日は体育祭当日。
あの日から、重岡くんは保健室に顔を出していない。
廊下ですら、すれ違うことは無かった。

張り切っている生徒や先生方がキラキラ眩しい。

私はあくまでも保健室の先生、だから競技の参加資格はない。

選手宣誓、という校長の声が大きなグラウンドに響き渡ると、赤いハチマキをした重岡くんと、青いハチマキをした藤井くんが小走りで壇上へと上がった。

ああ、久しぶりにみた、その笑顔。
ずっとこの体育祭のためにがんばってたもんね。

そういえば、大田さんは今日、重岡くんに告白するのかな。
重岡くん、どうするんだろう。

私はこの1週間、自分でも気づかないうちに重岡くんのことで頭がいっぱいになっていた。

神山「先生、俺がんばるんで！」

ちゃんと見ててね、そんな声にぼーっとしていた意識が引き戻された。

「はい！がんばってくださいね！」

神山「あともし、もし青組が勝ったら話きいてくれへんかな？」

顔が少しずつ赤くなっていく。
そんな彼に私は理解もしないうちに、首を縦に振った。

♡ ♡ ♡

神山先生の青組と、重岡くんの赤組。
どちらも白熱していてずっとみていられた。

『次は2年生対抗、借り物競争です。』

アナウンスが響くと、重岡くんたちが応援席から出てくる。
汗を弾く肌がかっこいいと思った。

.

2年生は順調に借り物競争を終え、最後は重岡くんやその他の生徒の番。

「がんばって…」

思わずそんなこえが出た時、パァンっとピストルの音が鳴り響く。
それに合わせて走り出す重岡くんたち。

スタートから50m先にある机の上のボックスからお題を引いて、そのおだいのものを持ってゴールするという極めて簡単なルール。

重岡くんは1番先に机に着いて、ボックスをガサガサと漁って、1枚の紙を手に取って広げる。

遠目すぎて、何がおだいかは分からない。

他の生徒たちも机に着いてお題をもらうと、それぞれ動き出すが、重岡くんだけがぱたりと動かなくなる。

そんな重岡くんに赤組の生徒や先生方が、がんばれがんばれー！と声を出すと、

彼はぱっと振り返って私と目が合う。

何日ぶりにお互いを視界にとらえただろうか。

「重岡くんー！がんばれー！！」

いてもたってもいられなくて、私の大きな声が響いた。