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「具合はどうです?」
「ん、平気」
蝶屋敷に来て二日目の午後、不意に眠りから覚めると君が錠剤と水の入った硝子のコップをお盆にのせて病室に運んで来てくれていた
この病室にいる他の三人は眠っていて、今だけは僕と君しかいないみたいな感覚に陥った
「起きててちょうど良かった。お薬飲みましょう。はい、口開けて下さいねー」
「自分で飲めるから…!」
君がいきなりコップを僕の口に近付けて薬を飲ませようとしてくるから慌てて止めた
同年代の子に薬を飲まされることが子供扱いされてるみたいで少し抵抗があったからだ
「あ、ごめんなさい無礼でしたよね」
「別に。……はい、飲んだよ」
「……」
コップをお盆に戻して君の表情を伺うと、どこか暗くて、「なにか悩んでる?」と興味本位で聞いてみたら君はゆっくりだけど打ち明けてくれた
「私、人の役に立ちたいと思ってここで看護師をしてるんですけど」
「うん」
「最近、向いてないんじゃないかって思うようになって。……私不器用だし、アオイさんみたいにテキパキ動けないし…」
……君は何かと悩み事が多い
鬼殺隊の隊士だった時だってそうだ
だからこそ、「この子を守りたい」って、君と初めて出会った時のように感じた
「少なくとも僕は向いてると思うけど。その仕事」
「本当ですか…?」
「嘘なんか言っても意味が無いでしょ」
「確かにそうですね」
君の優しい性格、誰にでも同じように接するところとか、何をするにも丁寧で慎重なところとか、全部、傷付いた人を助ける仕事に向いてると思うよ
なんて思ったけど、僕にそれを口にすることはとてもじゃないけど出来なかった
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作者名:あんもないと | 作成日時:2020年3月14日 18時