雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

45. 光彩へ向かって ページ45

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裕翔くんの家で、光の絵を見つけてから数週間が経った。
けれど、そこらの平社員である俺が、今まで生きてるかどうかすら不詳だった奴のことを調べ上げられるわけもなく、ストレスが溜まるばかりの毎日。





ただ、時間だけが過ぎてく。








残酷な記憶は、光の笑顔を蝕んで、俺の罪すら濁らせて、消えてく。


人魚姫の涙も声もこうやって儚く散ったのだろうか。








不条理な世界だなぁ、なんて呟いたら、隣で一服してた薮が「厨二病拗らせ始めたか」って頭を小突いてきた。






「 そんなわけないでしょ 」


宏太「 もしほうだとしたら一線引こうかな、と」


「 ちょっとー酷いなぁ、もぉ…」


宏太「 はいはい。ぶりっ子したって俺には効かねーぞー 」








社畜は大人しく仕事しようなーって、背中を押されてオフィスへ戻るけど…心の中では光を追い求めてる。

薮だって、仕事を吸入詰め込み始めたのは昇進とかそんなんじゃなくって、光を少しでも忘れるためなんでしょ？






「 …ほんと、不器用なんだから 」









ラップも一人で取り出せないような、不器用な薮には「仕方ないな」って笑いながら手伝う光が必要だ。そんなこともう随分前から分かりきってる。

どんな手段を選ぶことになっても、俺はきっと、光を探し出さないといけない。そんな気さえするんだ。お前のためとか、あいつのためとか、そんなんじゃないよ？ただ自分のため。






俺って昔から、わがままで、自分勝手で、暴君なんだからね！

光を探すのは罪を軽くしようとする自己満足だよ。






「 …神鏡大学、か 」






様々な専攻分野と、進学校に負けず劣らずの高い偏差値から人気の大学だってことくらいは流石の俺でも知っていたけど…そういえば芸能科もあるって聞いたことがあったな。


裕翔くんに詳しく聞いた大学の話を思い出す。

ケータイでタップした大学の地図。








俺ってば行く気満々じゃん……でも、今日は定時で帰れそうだし、うん…行ってみよう。








君に会えたら。
罪が軽くなる？

……ううん。







君にもしも、また、会えたなら。
ごめんねより、ありがとうって伝えたい。

あのとき踏み出した一歩の大きさや尊さに、ちゃんと感謝したいから。








追いかけっこはもうやめようよ、光。
あの頃には戻れないかもしれない。
それでも……それでも、さ。







『 なんだよ、いのちゃんー 』








またあの眩しさに、触れさせて。

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