44. 罪人なんかじゃない ページ44
yt side
「 慧、さん……?」
風呂から上がって、ダイニングへ行けば、いると思っていた彼の姿が見当たらない。
あらかた見回した後、俺は、バルコニーの戸に背もたれた。
「 ………んね。」
ごめんね。
「 ……んね………かる。」
ごめんね、ひかる。
月に照らされたあなたの頰に伝う涙。
悲しいくらい綺麗で、声を掛けられずにいる。
呪文みたいに唱えられる懺悔を聞くのは、初めてじゃない。
あなたはいつも一人になるとベランダに出て月を見上げながら孤独になるから。
慧さんの瞳が、月に照らされてほんのり青みがかる。
その横顔は儚すぎて触れたら壊れそう。
声をかけないのもそのせいかもしれない。
好きすぎて、ダメになる。
嫌われるのも、拒絶されるのも怖いから何も出来なくなって、動けないんだ。
あれだけズカズカと干渉して来たくせに、今更戸惑ってる。
月にしか見せられない顔を、俺に見せてくれたらいいのにと願うばかりいて。
彼は、罪意識が強すぎる。
何年経っても、それは変わらない。
きっとあの時より蓄積して重たくて、痛くて、苦しくて、辛いはずなのに。
紛れもなく恋人である俺に申し訳なさそうに触れる仕草がいじらしくもどかしい。
キスをするたび、哀しそうに目を伏せるのはなぜ?
「 ……慧さん、身体冷やすよ 」
ブランケットをその肩に掛けると一瞬身震いして、俺の胸に寄りかかった。
あなたの嘘は甘くて優しくて残酷だということを、きっと気づいてはいないんだろうけど。
慧「 ゆうと、くん…ごめん、俺…その…」
舌ったらずになるほど、外にいたの?どうして…
言えない気持ちを押し殺して、微笑む。
「 明日は満月だって。お月見する?」
何に関しても触れなかったのに驚いたような顔をする。そんなあなたにもう一度、目を細めて、頭を柔らかく撫でた。
慧「 夏なのに?」
「 真夏になっちゃうと暑すぎるから 」
俺たちが嫌いな梅雨が過ぎた。
すると必然的に、あなたがダメになる夏が来る。
あなたと過ごす初めての夏。
慧「 ふふ。そうだね。お惣菜とか買ってこうか 」
「 お酒もちょっぴりならいいかもねー 」
慧「 涼介くんとかも呼んじゃう?」
あなたの優しい嘘は…
「 ううん。二人きりがいいな 」
この夜に溶かしてしまえ。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時