フレンズ ytin ページ3
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裕翔「 いのちゃんさ、ほんと可愛いね 」
「 ありがとう?」
ゆっくりと頬杖をついて、裕翔がにわかに俺の頬を撫でた。
裕翔「 うん。一番可愛い 」
一番、と言うと果たして下は何番までいるのかな。
ごく自然に絡まった視線と
自然と重なった唇。
甘い、そんなあるはずもない感覚に陥った。
…途端に彼は残酷なまでに愛を穢す。
裕翔「 …ほんとに、女の子だったらよかったのに 」
無理だと知って、できないと知って
俺にそれを言うんだ。
求められてないことなんてとっくに知ってる。
愛なんてそこにはないことくらい、当の昔に気づいてる。
「 …じゃあ、女の子になれば俺をこのまま置いてくれるの?」
答えないで。
いつものように、曖昧に笑って濁して。
裕翔「 ……いのちゃんが女の子だったら?んー…」
こんなときに限ってコーヒーを飲む。
その動作に釘付けな俺をあざ笑うように、視線をよこした。
裕翔「 捨ててた、かな?」
悪戯に唇の端を上げて、
裕翔「 …なーんてね。ほら、コーヒー冷えちゃうよ?」
嘘のかたまりみたいなもん。
裕翔は隙を見せてるようで見せてない。
何が本当で何が嘘かなんて教えてはくれない。
「 うん…そーだね 」
苦いコーヒーを飲んだ。
涙目になるのを隠しながら、鼻声になるのを隠しながらぐいっと。
「 ……にっげ 」
他人の不幸は蜜の味、なんていうくらいに甘ったるいのは俺の涙。
ああ、これで終わるのか。
やっと、涙が枯れるのか。
裕翔「 愛してるよ、いのちゃん 」
屈託のない無垢な顔で紡ぐ言葉は
俺の心を黒く塗り潰していく。
「 俺も………俺は 」
いつからか言わなくなったコトバは
声が出なくなったかのように枯れた。
夏の蒸し暑い朝。
クーラーの音が無機質に響く静寂。
「 …裕翔、別れたい 」
俺は、君に嘘をついた。
「 …なんてね 」
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【 フレンズ 】
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こさこ(プロフ) - こんにちは(*´ー`*)すごく表現が綺麗なお話がいっぱいで夢中になって読みました◎とくに最後のゆといのちゃんのお話すっごく続きが気になります…!!(←ゆといの厨なので)素敵なお話をありがとうございました! (2018年1月8日 17時) (レス) id: 4f9f600403 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2017年4月26日 16時