絶世の美女 銀次Side ページ39
ふう・・・
離れに繋がる渡り廊下を歩きながら息をつく。
先ほど、大旦那様から楓さんが目を覚ましたと聞いて大慌てで
仕事を終わらせた。
楓さん、大丈夫なのだろうか。
あんなに傷ついた人間は普通、生きられない。
でも、あやかしの血が流れているだけあって、
手当ての途中で、ほとんど傷が塞がってしまった。
我々、上級あやかしとほぼ同じだ。
と、不意にあのあやかし姿を思い出して頬を染める。
何でしょう。この気持ちは。
楓さんが開眼だけをして、目で微笑んだとき。
あの時から、なんて優しい目だろうと思ってた。
姉の葵さんを思う姿は凛々しくて・・・
そこで、はっとする。
なにを考えているんだろう。私は。
あのまだ、可愛らしい楓さんのことを考えて。
あの人はまだ、かなり幼くて私のことなんか何も思ってないはずなのに・・・
私はため息をつく。
するとふっ、と甘くて爽やかな香りが漂ってきた。この香りは・・・
??「運命にすがりたい・・・♩あなたの・・・♪」
その声をたどり中庭をばっ、と見る。
そして、思わず息を飲んだ。
────そこには、一人の女神がいた。
見た目は、二十代前半。
すらりとした体を白い着物でつつみ、美しい金色を帯びた青銀の髪は風で浮いている。
その周りには暖かい金色の光の玉が無数に飛び交っていて、神々しかった。
伏せた目は見えなかったが、青銀の長い睫毛
すっ、と通った鼻、引き締まった唇。
繊細な顔立ちでとても美しかった。
その人は美しい澄んだ声でゆっくり歩きながら歌い続ける。
??「考えれば、
考えるほど、
胸を突き刺す────私は歩きつづける。君という光に会うために。」
その人は歌い終わると、息をついた。
私は侵入者かも知れない者に、声をかけるため一歩近づいた。
ギシッ
渡り廊下の軋む声にびくりと震える、幽霊。
銀次「あ,あの」
そのまま逃げようとする従業員逹が噂している幽霊。
慌てて下りてその手をつかむ。そして、はっとした。
銀次「・・・暖かい」
その手を振り払い振りかえずにその美女は走り去る。
私はじっ、とその儚げな後ろ姿を消えるまで呆然と、見つめていた。
銀次「ん?」
この手布・・・
楓さんの傷の治療に使った手布を拾う。
あの香りと、この手布・・・
銀次「まさか・・・」
ざぁっと音を立てて風が吹いた。
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桜夜 - すみません。大幅にシナリオと設定に変更があります。 (2018年10月29日 18時) (レス) id: 5ed7eda12b (このIDを非表示/違反報告)
桜夜 - 改名しました。これからも宜しくお願いします!! (2018年10月13日 22時) (レス) id: 5ed7eda12b (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - すいません。今から作品を大幅に変えます。やり方が今ごろよく分かってきました。ご迷惑をおかけします。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: 5ed7eda12b (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - お世話になります。ありがどうございます。 (2018年10月2日 21時) (レス) id: 5ed7eda12b (このIDを非表示/違反報告)
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