七色幸せ笑話【短編集】 (ページ11)

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「園芸部って、他の部と掛け持ちしてる子もおるんやろ？」

「そりゃ、まぁ…」

「なら、俺も…」

「でも、横山くん部長でしょ？部長が掛け持ちしてるとか、聞いた事ないよ？」

横山くんが、何でこんなにグイグイくるのか、全くわからなかったけど

「けどっ、何か手伝わせて欲しいねんって。あっ、夏休みとか？俺、部活あるから、そん時の水やりとか」

夏休み中の水やりをお願いできるのは、確かに魅力的な申し出で

「じゃあ…お願いしよう、かな？」

「おぅ、任せといてっ」

その次の日から、前田さんが流したであろう変な噂は、パタリとなくなった

ただ、前田さんの視線は以前よりも、何倍も鋭いものになった気がするけれど…

園芸部の活動は、週一回程度。それがたまたま、バスケ部の練習が早く終わる日と重なってて

「おぉう、お疲れ～」

「お疲れ様」

最初は、何かの気まぐれで手伝うとか言ってるのかと思ったけど、横山くんは、毎週園芸部に顔を出すようになった

「これ、運ぶん？」

「うん。あっ、でも重いからいいよ」

「何で？」

「横山くん、部活終わりで疲れてるでしょ？」

「イヤイヤ、俺男やし。こんなん軽いって」

普段は、のほほんとゆっくり活動している部活だけど、花の苗や肥料、土なんかが届いた時は、ちょっとした重労働

「ほらっ。俺おった方が良かったやろ？」

「あぁ～。まぁ、今日は…ね」

「何やねんっ、今日だけかいな」

「ふふっ。ん～ん、いつも感謝してますよ？部長さん」

「いえいえ」

玄関前のプランターに、苗を植えながら

「こっちこそ、有り難いって思ってるよ」

ポツリと呟いた横山くん

「ぅん？」

「ここきてさ、土に触れたり花みてたりすると、癒されるっちゅうか…。園芸部の子らはギスギスしてへんやんか？」

「そう、だね」

うちの部は、本当に花や植物が好きな子達の集まりだから、基本的に部員同士の衝突することなんてないし、“ギスギス”となんて無縁だ

「ほら。やっぱ運動部とかはさ？レギュラーとかあるやろ？」

「うん」

「俺、有り難い事に1年からレギュラーやらせてもぉたけど、先輩の中にはおもんないって人もおってさ。色々……あるよな」

「………そっか」

「今もさ、ちょっとごたついとって」

「うん……」

「……ごめん。こんな事、原田さんに話すことっちゃうよな」

そう話す横山くんの顔は、これまで見たことのない、辛そうな顔だった