七色幸せ笑話【短編集】 (ページ12)

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学内で、彼を知らない人なんていなくって

何の悩みもない、順風満帆な高校生生活を送ってるんだと思ってた

「大変…なんだね」

「……せやな」

けど、辛そうな横山くんの顔見てたら

「私でよければ、話くらい聞くよ？」

助けてあげたい………

そう思った

その日から、園芸部の活動終わり、駅前のファミレスで横山くんの話を聞く…そんな日が何日か続いた

『そういや、来週バスケ部休みやから、最初から行くな』

バスケ部が休みなら来なくても良いよ。と一度は断ったけれど

『俺が行きたいんやから、ええやろ？』

勝手に来る気満々で

いつもと変わらない花壇までの道のり。なのに、少しだけ足取り軽く、心躍らせながら歩いていくと、遠くからでもわかる花壇の異変に気がついた

さっきまでの浮ついた気分がウソのように、妙な胸騒ぎを覚えて、花壇に駆け寄ると

「何…してるの？」

花壇の中、呆然と立ち尽くす横山くん。その足元には、踏みつけられた花達

「やっ、これはっ…」

何か言いたげな横山くんのこと、見て見ぬ振りして

「原田さんっ！」

名前を呼ばれても、振り返ることなく駆け出した

ひとり屋上で空を眺めていると

「A先輩…」

現れたのは

「……安田くん」

園芸部の後輩の安田くん

「あの、花壇の件なんですけど」

「うん。ごめんね？私のせいで…」

「そんなっ。先輩が悪いわけやないですよ」

「………」

「やったのは、どうもバスケ部の2年みたいです…」

「………ん」

「あの女部長と2年生が、花壇のとこにおんのを友達が見た、言うてて」

「そう」

「横山先輩は、止めてくれたんやと思います」

「そうだね」

「先輩、わかってはったんですか？」

「………うん」

「なら、なんで横山先輩の話、聞いてあげへんのですか？」

「私の……せいだから」

「だからっ、ちゃいますって」

「違わないよ」

私が、横山くんと仲良くならなければ、こんな事にならずに済んだのに

「ホント、ごめんね」

私達は、月とスッポン

スッポンが月に近付くなんて、あってはならない事だったんだ