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 Null ページ12

――ぐううう。


空気が押しつぶされた音がお腹から鳴る。
もちろん、私のお腹からだ。


「……すっかり話し込んでしまったねえ。続きは食事の時に話そうか」
「………………はい」


朝から怒涛の展開で忘れてしまっていたが、本来は朝食を食べる流れになるはずだったのだ。それなのに、空腹を忘れて過去の真相を暴くことに躍起になっていた。

すると、どうだ。耐えかねた身体は悲鳴をあげ、ついにその羞恥を晒してしまった。

彼は、赤面する私を優しく一瞥すると、虚空にむかって叫んだ。


「おーい、エリスちゃーん!」
「わかってる。先に準備して待ってるわ」


彼女が名前が呼ばれると同時にパッと目の前にエリスちゃんが現れ、答えになっていないような答えを言い残して部屋を出ていった。


「……え、今どこから」
「それも食事の時に。今まで隠していたこと、全部曝け出すからそのつもりでねえ」


今まで、この部屋には2人しかいなかったはずなのに。

彼女の非現実的な登場について問うが、はぐらかした彼はそう言いながら立ち上がり、私の前に移動して手を差し伸べる。

まるで、王子様がお姫様を迎えに来たかのように。


「それじゃあ、行こうか…………さぁ、お手をどうぞ」


そっと手を重ねると、そのまま身体ごと引かれて倒れそうになる。だがそうなる前に、彼は優しく腰に手をまわして私の体を支え、然るべき場所へと導く。

――ああ、なんて優しい顔をして導くんだ。
憑き物が落ちたような、満ち足りた笑みで。


――…………鴎外さん。


貴方は父親を殺した殺人鬼であること人生の汚点のように思っているみたいですが、その行動が父を思ってのことだと、実はちゃんと理解していたんですよ。

でも、その記憶も、消されちゃってたみたいです。


だから、私は――貴方を許します。


……いえ、とっくに許していました。
貴方が私を引き取ったその瞬間から、私と貴方は“家族”なんですから。父親(パッパ)を支えるぐらいは、させてくださいね。


 


貴方の心を殺してしまった、優しくない殺人鬼より。


 


優しい殺人鬼
―Ende―

あとがき→← 16時



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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Lynn - 返事と更新待ってるよ (2022年7月12日 6時) (レス) id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - 初めまして、Lynnだよ。このストーリーでいつか森鴎外(文スト)に「私、優しいので。」て言われたいな。 (2022年7月5日 5時) (レス) id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - あと、時期も時期ですので体調に気をつけてご自愛ください。(((長くてすみません… (2021年1月17日 19時) (レス) id: 49f17fb925 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - お久しぶりです(覚えてないと思いますが)リアルで色々とあり離れていた内に完結していたとは…!!とても深く読ませていただいていました。完結おめでとうございます。そして、この作品を作っていただきありがとうございました!!!(号泣) (2021年1月17日 19時) (レス) id: 49f17fb925 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - No.7さん» 無事に完結できまして、安堵の気持ちしかございません。更新を楽しみにしてくだっさたことは本当に作者冥利に尽きます故、深く感謝申し上げます。ありがとうございます。 (2020年9月16日 9時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2020年7月18日 18時

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