Sechs ページ4
――彼女を起こさない様に、そっと扉を開ける。
足音を殺して部屋の中心に行けば、Aの可愛い寝顔。
「……それじゃあ、エリスちゃん。頼んだよ」
「分かったわ」
後ろをついてきたエリスちゃんが、前に出てベッドに乗りAの服に手を掛け――そこで私は、後ろを向いて《何が》とは云わないがソレを回避する。後ろから聞こえる、耳を犯す衣擦れの音を非常に、また官能的に
「……リンタロウ、こんなことしてイイの?」
「何の事かな?」
ボチャボチャ、と水が落ちる音がする。
そう、今はエリスちゃんにAの体を拭いてもらっている。よって、やましいことは何もない。
「また、《クスリ》使ったでしょ。自分が処方できる立場だからってイイ様にし過ぎ」
「使わないと、水の冷たさで彼女が起きてしまうことも考えられるからね。起きたら服が脱がされていた、なんて怖いだろう?」
「あたしはリンタロウの方がコワイ」
「云うねえ」
布が体を撫でる音が何度もした後、エリスちゃんが床に降りる音がした。
「終わったようだね」
「もう振り返ってイイ」
エリスちゃんの許可を貰う前に振り返り、Aちゃんの姿を確認する。衣服の乱れはない。完璧だ。
「でもリンタロウ、汗、拭いていいの?《かく》のがイイって云われてるケド」
「暑すぎれば体力を余分に消耗してしまうからね。それに、不衛生でもあるから、体は冷やしつつ、発汗を促すのが最適解だよ」
エリスちゃんと話しつつ、そっとベッドに腰掛ける。
Aに手を伸ばして髪を掬い、それを水の様に落とす。多少、彼女を見下しながら。
「……彼は怒っているだろうか」
「なに急に……思い出したの?」
エリスちゃんの言葉に、こくりと頷く。
あまりに彼女の造形が彼に似ていたから。
「どうするかはリンタロウが決めること。別に、あたしに任せても好いケド」
「うん……有難う」
ギシ、とスプリング音を立てて床に立つ。
「……エリスちゃん、水を足しておいてくれたかな」
「当然」
「それじゃあ、戻ろうか」
立つ鳥跡を濁さず。
――引き際は美しくいれるだろうか。
(後は野となれ山となれ)
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臣民(プロフ) - 坂竹会長さん» 返信が遅くなってしまい、誠に申し訳ありません……!お互いに無理のない程度に頑張っていきましょう!^^ (2019年6月6日 21時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - すッッッッッッッ(殴みません((!! 習い事の試験やら、学校という悪魔やら風邪やらなんやらで全然開けてませんでした…;;(笑)続編…!!更新頑張ってください!!私も頑張りまs((蹴発火 失礼しました_;;ーд#_ (2019年6月3日 8時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - もくれんさん» ありがとうございます!より一層、精進してまいりますので、よろしくお願いいたします! (2019年5月12日 22時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
もくれん(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも頑張って下さい! (2019年5月12日 18時) (レス) id: b1b6b426cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:臣民 | 作成日時:2019年4月21日 19時