【文スト】続・優しい殺人鬼 【森鴎外】

　１５時 ページ18

――「はい、お疲れ様」


その一言に崩れ落ちるエリスちゃんと私。まさか、休みなしでずっと写真を撮られるとは思わなかった。足が限界だ。


「リンタロウは凝り性だから……ダメ」


肩で息をする様は何とも哀れだ。
さて、そんな状態を招いた鴎外さんはと言うとカメラを見てニマニマしている。それも、とびっきりに惚けた顔で。

当然、そんな彼が各ポージングを一枚撮って『はいおしまい』なんてわけが無かったのだ。思う存分撮られた。最低、各ポーズにつき5枚は。だから、こんなに疲労困憊なのだ。


「すごく疲れているように見えるけど……椅子を用いたポーズもあったはずだ。そんなに疲れるかなあ」
「あんなのスクワットですよ」
「リンタロウはその辛さを知らないからそんなコト言える」


盛大なバッシングにたじろぐ鴎外さん。逆にどうして彼は疲れないんだ。立ったり座ったり、色んな角度から撮ってきたはずなのに。


「はぁ…………お腹が空きました」
「ホント、何も食べてないまま撮影なんて信じられない」


我々が愚痴をこぼすと、鴎外さんは苦笑いで「何か持ってくるよ」と言い、部屋を出て行った。“なるべく早く”で頼みたい。


「……ねぇ、ちょっとイイ？」


座り込んだまま視線を声の主に移すと、エリスちゃんが顔を近づけていた。


「そのお人形にホントに身に覚え、ナイ？」
「無い、ね……多分」
「でもリンタロウ、大切な物って言った」
「その言葉は嘘じゃないと思うんだけど……」


憶えて、ない。
これが全てだ。

そう伝えると、興味なさそうにふーん、と呟いた。


「……そう。それならそれでイイ。リンタロウ、待ちましょ」


　



(仲の良い刺客)

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