第二十九話 不還匕首 ページ31
――じっと息を潜める。
暫く自室に引き籠り、武装探偵社の情報を集めた。
中々の過多さに久しぶりに精を出した気がする。
そして、計画通り通気口に入り、
所々に有る、道を阻む物を短刀で切り伏せながら間取りを確認し、
武装探偵社内を徹底的に見張り、人の出入りのパターンを覚えた。
そして、今は最も人が少ない時間に加え、
各々出かけて行った社員達。
――絶好の機会。
兄妹は出かけ、専属医と黒髪の少女と虎の少年は買い物、
名探偵も別の買い物、眼鏡の人はその付添い、
麦藁帽子の彼は依頼の調査……。
――もう一度。
――何としてでも、実行する。
念には、念を。
この状況に油断せず、なるべく音を立てない様に通気口を這う。
――目指すは福沢諭吉の首唯一つ。
―――――――――――――――――――――――――…
ある国の王族に双子の兄弟がいました。兄は次期王でしたが、生まれつきの病により何も覚えることが出来ない身でした。弟は兄が自分を忘れても兄を思う優しい弟でした。二人は瓜二つな容姿に加え秘蔵っ子とされ、欲しい物は何でも与えられて王宮の奥深くで幸せな日々を過ごしていました。空の色も知らなかったけれど、二人は幸せでした。ところがある日、それは突然崩れました。なんと、国王は暴君で人々から反感を買っていたのです。ついに王宮内まで侵略され、召使い達は惨殺。国民はもう二度とこんな采配はさせないと、次期王を探し始めました。その怒りの咆哮に二人は怯えました。
そして、弟は生まれて初めて外に出ました。人々の群れと空が目に入りました。一生忘れることができない程、綺麗な青空でした。怒れる国民は弟を捕えました。縄に繋がれ王宮外に連れ出されると、あんなにも立派だった王宮は音を立てて崩れ、瓦礫となりました。「兄はまだ中に居た。 兄は死んだ。 次期王は死んだ」弟が呟くと歓声が起こりました。
兄は一人 「弟」 瓦礫の山を見て泣�¶・±�きました。
――パタン。
「……鼠が来たみたいだね」
本から通気口に目を向ける。
その拍子に砂色のトレンチコートが揺れた。
――嗚呼、慣れない本は読むものじゃあないね。
そっと本棚にしまい、社長室へ向かった。
(人には、宿命というものがあるんだよ)
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蒼(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時