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第二十四話 ロヴェリア ページ26

――人が、いない。


否、ちらほらとは居る。

だが、少女が云ったように“混んでいる”とは、
到底思えなかった。

彼女の正体を怪しみながら、元の席へ戻る。


「お帰りなさい」
「ああ」


冷静な思考を取り戻すため、
残っていた珈琲を飲み干す。

その後に息を吐く動作やら何やらを凝視され、
聊か居心地が悪い。

しかし、何もしていない以上疑うのは申し訳ない。
何時切り出すか悩むうちに、暫くの沈黙が続く。


「……何者だ」


だが、ついに痺れを切らし此方が口を開く。
彼女は一瞬だけ目を見開くと、少し俯く。


「……貴方こそ、何者?」
「…………何?」


言葉の真意を計れず、睨みつける。
当の本人の顔は、よく見えない。


「毒の回りが異常に遅い」
「……何を云って」


その時だった。

かくり、と行き成り頭が垂れると同時に、
猛烈な倦怠感、吐き気、眠気が一斉に襲ってくる。

厭な汗が吹き出し、
視界さえも安定せず、世界の輪郭が歪む。

今にも倒れそうな体を拳で支え、耐え忍ぶ。
猫が威嚇するような荒い呼吸が漏れ出る。

少女は、その様子を舐める様に見つめる。

が、身を乗り出して片手で私の顎をつかみ、
親指で口を開かせたかと思えば、

刹那――


「…………ッ!」


机の上に置かれ、彼女を支えていたもう片方の手が
私の後ろに伸び、髪を引っ張り上を向かせる。

そして、接吻がされた。

無抵抗の体は口の中に流し込まれるモノを容易に受け入れ、
喉は勝手に飲み込んでいく。

長い長い接吻。

全てを飲まされたあと、彼女の両腕は離れ、
支えを失い、私の体は力無く椅子に寄りかかる。


「……さようなら」


女は私を見下し、脇を通って行く。


――その瞳が、どこか寂しそうだったのは気のせいだろうか。




 


(ハーデース・キニギ)

第二十五話 長の意地→←第二十三話 世俗自叙伝



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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