【文スト】首領、１３歳になります。【森鴎外】

第二十二話　七天抜刀 ページ24

昨日は、散々にエリスちゃんと遊んだ。
彼女には申し訳ないが、楽しくなかった。

いや、楽しかった。 間違いなく。
ただ、気が気でなかっただけで。


――“探偵社の社長を葬る”。


首領、私は貴方のために。
否、貴方だけの刃となりましょう。

クロゼットを開き、首領からもらった服、
白いワンピースを見に纏う。

まだ着ることができた状況に、
幾らか安堵しながら、毒薬を奥歯に仕込む。

後は丸いポシェットを肩に掛けて、支度は上々。

部屋の外に人影が無いか確認し、
昨日、頭に叩き込んだ探偵社の社長の予定を確認する。

……相手の予定など、
私の諜報能力をもってすれば簡単に炙り出せる。

確か、彼は午後三時に喫茶店で休憩する予定のはずだ。
其処を、狙う。

意を決して曲がり角を曲がれば、
私には似合わない、昼下がりの高い太陽が。

――ずっと、日陰者だと思っていたのに。

くらくらする程の眩い日差しに戸惑いつつ、
すれ違う人を避け、目的地に向かう。

ふと、周りを見れば、硝子越しの洋服。
どよめきざわめき、吃驚する程広い道……！

見るもの聞くもの全てが私を魅せる。
が、慌てて首を振り、使命を思い出す。

誰に頼まれたわけでもない、
自主的な“仕事”。

――コレが終われば、きっと愛してくれます……よね？

淡い希望を抱きつつ、足早に進む。


　


(善人は見返りを求めない)

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