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第二十一話 鵞鳥婆さん ページ23

「そう云えば、A」
「はい」


沸いたことを確認して、紅茶を煎れはじめる。


「リンタロウが、“探偵社の社長を葬る”って云ってた」
「え?」


出来立ての紅茶が入ったティーカップを落としそうになった。
エリスちゃんは、私の様子なんか知らず、ケーキを口に運ぶ。


「あの、それは、どういう――」
「なにこれ! すっごく美味しい!」


目を爛々とさせるエリスちゃん。
次々とケーキを頬張る。

――こうなったら、もう何も聞いてくれないだろう。

がっくりと肩を落としつつも、紅茶を差し出す。
ちらり、とクロゼットを見る。

――あそこには、首領からもらった、大切な、大切な服がある。

今より、少し背が低い時にもらったから、
もしかしたら、キツイかもしれない。


「考え事?」


ふらっと投げかけられた言葉に、慌てて振り向く。


「あまり、無理しちゃダメよ」
「し、しません」


声が上ずってしまった。
怪しまれた、と思ったがそんな様子もなく彼女は紅茶を啜る。


「……美味しくない」
「えっ」


突然の、宣告。
割と、上手くできたと思っていたので素直に落ち込む。


「お砂糖、入れてないでしょ」
「あ……」


うっかりしていた。

普段、コーヒーしか飲まず、
砂糖も入れない私にとっては、縁もないことで。

だから、忘れてしまった。

早急に角砂糖の入った瓶を渡せば、
ぽちゃぽちゃと、ひぃふぅ……五つの四角が食器に混ぜられて消えていく。


「女の子は、お砂糖とスパイス。
 そしてすてきなものがいっぱい集まってできているんだから
 欠かしちゃダメよ」


――砂糖と、スパイスと、素敵なモノ。

私が、そんなものでできていたのなら
どんなに良かっただろう。


 



(恋と、毒と、―――――)

第二十二話 七天抜刀→←第二十話 好きなこと



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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