【文スト】首領、１３歳になります。【森鴎外】

第十二話　甘酸っぱい ページ14

「リンタロウはショートケーキのイチゴを
　最初に食べる？ それとも最後？」
「うーん……」


唐突な質問。
特に意識したことは無かった。


「……最初に食べる、かな」
「どうして？」


目の前の少女は机に肘をつき、
手首のスナップを利かせてフォークを回す。

視界の端で赤色が動く。


「先の方が何事も有利だから、かな」
「なんで疑問形なの」


顰めっ面で云われる。


「…………だから、リンタロウはAと“合わない”」
「どうして？」
「Aはイチゴを最初に食べる方だから」


視界の端の赤色が動きを止める。


「…………じゃあ、エリスちゃんはいつ食べるのかね？」
「好きな時。 だって――」


“だって”？


「また食べればイイから」


そう云って、苺を食べる。
それも、至極仕合せそうな顔で。

暫くして、喉が動くと少女は思い出したように口を開く。


「あと、リンタロウ。
　“先の方が有利”って言う割には恋に奥手なのはどうして？」
「それはッ」


思わず立ち上がると、
それを抑制するように空き皿が突きつけられる。


「“おかわり”、リンタロウ」


喉まで言葉が出かかった。
が、しかし。

少女の満面の笑みに勝てず、
次の品を取りに行った。


　



(好きなモノを好きなだけ)

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