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第十一話 フルータリアン ページ13

懐から放たれた三本の刃が間合いを裂く。
それは、スローモーションのように。

私は勝利を確信した。


――あの音が聞こえるまでは。


「ふっ――!」


師匠の口から漏れ出た息の音。
気づけば、三本の刃が私に向かってきている。


「あっ……」


突然のことに受け身が取れず、
弾き返された練習用苦無が爪先に、手の甲に、額に。

鈍い音を立てて辺りへはじけ飛ぶ。

頭が傾き、ぐらりと体が倒れる。
最後に見えたのは私に駆け寄る師匠の姿だった。


―――――――――――――――――――――――――…


――何か聞こえた?


そんな気がして、黙った。
鈍い音が聞こえた気がしたが、耳を澄ましてみても、何も聞こえてこなかった。


――気のせい?


「きっと、木の精」


声がする方に視線を向ければ、
此方なんかに目もくれず、エリスちゃんがあらゆる洋菓子を頬張っている。


「美味しいかい?」
「マズくはない」


拗ねたような顔をしてあちらの皿へ、こちらの皿へと手を伸ばす。


「そう云いつつ、食べているじゃあないか」


椅子を引き、座る。


「“本当に食べたいものが分からないの”。
 そうでしょ、リンタロウ」


正面にいる私に、苺が刺さったフォークの刃を向ける。

刃の奥に見えるエリスちゃんと、机の上の皿を見比べる。
皿達の上には、もう、何も乗ってはいなかった。


 


(口侘しい)

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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