【文スト】首領、１３歳になります。【森鴎外】

第三話　仕事 ページ5

今回の仕事は５人仕留めること。

既に１人仕留め、一人逃した。
今はその逃げた一人を追っている。

なるべく音を立てない様に。
なるべく気配を遮断する様に。

外套に身を包み、夜の道を駆ける。

走りながらレッグポーチから毒を取り出して口に含み、
少し速度を上げて相手の進行方向へ先回りをする。

脳内に地図を浮かべ、目的の場所で静止する。

止まった数秒後、視線の先の闇から逃げたターゲットが徐々に姿を現す。
奴は私と目を合うと、顔を青くさせて来た道を戻って行く。


――逃がさない。


一気に走りだし、その背中を追いかける。
そして、服を掴んでしまえば此方のモノ。

短く悲鳴を上げるターゲットを引っ張り、地面に倒す。


「も、もう…………許しッ」


泣きながら許しを請うターゲットに、静かに接吻をする。
ねっとりとした、暴力的な口づけ。

これが私のやり方。


――御免なさい。

――貴方を逃がしてしまえば、許してしまえば。

――私は愛されなくなってしまうから。


心の中で詫びながら徐々に口を開き、含んでいた毒を流し込む。

数秒後、ガクガクとターゲットが震え始める。
毒が効き始めた合図だ。

こうなれば、あとは後処理をするだけ。

唇を離し、持ってきた布で相手の唇を拭い、
近くの壁に寄りかからせる。

そして、口紅で“クイックシルバー”
と、ターゲットの後ろの壁に書く。

その後、数歩下がり、全体の様子を眺め、
満足したら去る。

４，５メートル歩いた後、振り返ると
ターゲットはすでに生気を出さずに項垂れていた。


――自分の幸福は、他人の不幸の上にある。


だから仕方ないと割り切り――
次の仕事へ向かった。


　


(あと、三人)

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