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第十七話 我が生活 ページ19

二段ベッドがズラリと並ぶ仮眠室。

何時もなら二三人が居るのだが、いない。
此れ幸いと思い、どっかりと近くのベッドに腰掛ける。

その正面のベッドにA、と言うらしい少女を腰掛けさせ、
俺と向かい合うようにさせる。


「…………呆れたもンだな」
「なにが、でしょうか」


小首を傾げるA。


「手前、首領を慕ってるンだろ?」
「ッ……!」


俺の発言に、分かりやすく動揺する。


「な、何故それを……」
「このことは俺だけじゃねェ、“ポートマフィア全体が知っている”」


その言葉を聞いて声にならない悲鳴を上げる。

本当に呆れたと思い、ポケットに手を入れて煙草(ボックス)を取り出――
そうとしてやめた。

女の前で吸うモノじゃないからな。


「あの……お気になさらず、吸って下さい」
「ん、おぉ、そうか……」


その様子に気づいたAに促され一服吸う。


「――で、だ。
 慕う相手がいるのに色仕掛け何て、するもんじゃねェ。
 そういうことは、恋人にするもんだ」


ふぅ、と少女に煙がかからないように息を吐く。
それと同時に、この少女への呆れ、苛立ちも吐き出される。

頭はすっかりさっぱりした。


「……でも、紅葉先生に、やれ、と」
「相手が云ったことに従順に従うだけなら狗でもできる。
 そんな奴だと、いつか使われるだけ使われて捨てられるぞ」


A、という暗殺者の名前は裏社会において非常に有名だ。
実績も悪くないことも然る事ながら、何と云っても

――首領の、お墨付き。

何度此奴に嫉妬しただろう。
今では莫迦々々しくて自分に嫌気が指すが。


「捨て、られる……」
「ま、まぁ俺もトウキョウで苦い経験があってだな……」


譫言の様に呟くAに焦り、過去の話を切り出す。

俺はほんとに馬鹿だったのかもしれない。

この少女が“どんな少女”かは、一番俺が“見てきた”だろうに。


「その……だ。
 だから、Aの仕事への執着は理解しているし、気づいてもいる。
 ……仕事、貰えると好いな」


無理やり〆た感があるが……どうだ?
と、半ば縋る気持ちでAを見たが、

思った以上の反応は、得られなかった。


 


(ブラック・ブラック・ヴェーゼ)

第十八話 愛しい罠→←第十六話 柏村



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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