第七話 堂廻目眩 ページ9
さてと…エリスちゃんに後で謝ろう。
ただ今エリスちゃんから大人の器用さで鍵を掏り、
大人の俊敏さで地図の不自然な空間に入る。
怖い、でも見たい。
そんな好奇心に勝てなかった。
近くの蝋燭を拝借して周りを照らしながら奥へ進む。
見たところ座敷牢みたいだ。
「何方か居ませんか…?」
少なからず小さく、かすれた声になる。
此処はマフィアらしいから情報漏洩者とか居るのかな。
いや、そんなことをしたら真っ先に拷問部屋だろう。
「ぼくがいるよ」
「!」
ヒュッ、と短く息が吸われる。
誰でもない、私の。
……駄目だ、此処に居てはいけない。
本能がそう告げる。
でも
「だ、あれ」
好奇心には逆らえない。
「ふふふ、こっちおいでよ☆」
嫌だ、嫌なのに足が声の元に進む。
…こうなったらどうにでもなれ。
そっからの私は速かった。
まず蝋燭を声の元に向ける。
「眩しい!」
「お?」
何だ。何で声で分からなかったんだろう。
子供じゃないか。というか…
「何で君のように幼い少年がいるの?」
これはデジャブでは無い。決して。
「…ぼくは夢野久作。13だから幼くないよ」
「何と!」
ごめんよ夢野君。年を取るとみんな幼く見えるんだ。
…小さい子が。
「ねぇ、だぁれ?」
「エリスちゃんのお母さん、Aだよ」
「Aさん、だね」
「そうだよ〜。夢野君」
すると夢野君が何かを考え始めた。可愛い。
…鴎外さんのがうつったか?
「…久作でいいよ」
「分かった!久作君だね!」
「…」
おや視線が冷たい。何故だ。
「…ねぇ、此処から出して?封印されてるんだよ」
「えっと…」
確かに鍵がある。出すのは容易い。
けれど、この子供が極悪人という可能性もある。
「ごめんね。鴎外さんと相談してか」
「そう、じゃあ頑張ってね☆」
シュボッと音がして蝋燭の火が消える。
消したなコノ子供。
…待てよ。明りの頼りはこの火だけだった…
「嘘!久作君!?ねぇ!居るんでしょう!?」
真っ暗になったことで芽生えた恐怖という化け物。
そして誰も応答しないことで芽生える孤独感。
「嘘…、嫌だ。ヤダ…」
どんどん自分が惨めに思えてくる。
「うう…ううぅ…」
嗚呼、涙が出て――
「お母さん!」
(小さな救世主)
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臣民(プロフ) - ハニーさん» まだエリスちゃんの正体が明かされていない時でしたからね……。その設定で大丈夫だと思います! (2019年2月3日 10時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 此処でのエリスちゃんッて普通の子供設定なンですか? (2019年2月2日 16時) (レス) id: ec7085eabe (このIDを非表示/違反報告)
エリザベート(プロフ) - 4番希望で!! (2016年9月1日 12時) (レス) id: 4126f800ee (このIDを非表示/違反報告)
みるの - 4を希望します! (2016年8月31日 1時) (レス) id: ae8c0f0041 (このIDを非表示/違反報告)
夜月☆彩(プロフ) - 1が読みたいです! (2016年8月30日 22時) (レス) id: 89f03b0b28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:臣民 | 作成日時:2016年7月28日 22時