ささえあい。 (ページ9)

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「マサ」

帰ろうとした時、昴くんが柳田さんを呼んだ。
何も言わないでずっと真剣な目で柳田さんを見つめる昴くん。私はきっと席を外した方がいいな。

『先に帰りますね』

マサさんにそう言えば昴くんの方から「向こうで待ってて。夜は危険だからマサに送らせる」と言われたので、近くのインフォメーションルームのソファに座って待つ事にした。二人だけで話…チームの事かな？

「どうぞ」

さっき時間を知らせてくれた担当の看護師さんが自販機で買ったカップのお茶を差し出してくれた。この人には私達の関係はバレているけど、患者さんの秘密は絶対だから口外しないでいてくれている。

『ありがとうございます』

お礼を言ってそれを受け取り、看護師さんは私の隣に座った。他にも看護師さんは居て、今はちょっとした小休止らしかった。今夜は当直らしい。

「井上さんはこんなに出来た献身的な彼女が居て幸せ者ね」

『いえそんな…』

「あなたが居ない時、ずっと私にあなたの事を話してくれるのよ。バレーの事よりもまずはAちゃん」

『え…』

「ご飯も栄養バランスを考えて作ってくれたり、一緒になってバレーの試合映像を見て研究してくれたり、上手くいかなかった日は正直に言ってくれて、その後はちゃんと隣で優しく笑ってくれる。あなたが支えてくれてとても感謝しているって、よく私に教えてくれるわ」

…そんなの、反則だよ…
何も知らなかった。目覚めて早々、気にしたのはバレーの事だったから、こんな状況でもバレーが一番だと思っていたのに…
それに、いつもありがとうと言ってくれてたけど昴くんがそういう風に思ってくれていたなんて、何も知らなかった。こんなに近くに居るのに昴くんはいつものように飄々と軽いありがとうを言うだけ。そのありがとうの中にはそんな想いが詰まっていたんだと思うといてもたってもいられなかったけど、それを止めたのは看護師さんだった。

「柳田さんが出てからにしよう？今は、男だけのハナシ」

『…っ、はい』

「じゃあ、柳田さんが先に出てくるか、Aちゃんの涙が止まるか、競走ね！」

『え…！』

「Aちゃんが負けたら私にコーヒー奢るっ」

『ええ！？』

優しい優しい看護師さんに出会えて本当に良かった。