ささえあい。 (ページ7)

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昴くんが目を覚ましたのは明け方だった。
柳田さん達は試合があるから昨日帰り、ご両親と私が病院に残った。キャプテンではなく柳田さんが来たのは、所属チームが同じだかららしい。
因みに、昨日の試合は勝った。私の口から言うのも気が引けたけど、目を覚まして開口一番が「試合は？」だったので涙を浮かべながら「勝ったよ」と教えてあげると、昴くんは力なく「よかった」と笑った。
病気を知った昴くんは流石に落ち込むかと思ったけど、いつものように飄々としていた。マジすか、と笑うその心の中で何を考えているのだろう。ここに来てポーカーフェイスは辞めてよ、と思うしおばさんも「こんな時まで何ヘラヘラしてるのよ」と涙を浮かべながら言っていた。
昴くんから発見された病名は、まあまあ耳にするそれだった。担当医もリスクは伴うが治らない病気ではないと仰ってくれて、今はその言葉に安堵した。昴くんは無事、HCUに移された。

「Aには心配かけたな、ごめん」

『ううん、生きててくれてよかった』

「大袈裟だなあ」

『だって！跳んだ瞬間にネットにダイブだよ！？バックアタックだったら脳震盪まで起こしてたんだからね！』

「ちょ、ここ病院…」

『っ…！』

それでも怒れずにはいられない。こうやってお説教紛いの事が出来るのも生きているからこそ。
本当に…生きててよかった。
昴くんの事は朝一番のメディアで大きく報道された。とにかく昴くんの事ばかり。協会を通してマスコミ各社に報され報道されているが、本当の理由は明かされていない。どうしてあの場面で気を失うように倒れたのかという疑問は骨折という診察には収まらないのは当然で、院内にも昴くん見たさにこちらを見てくる野次馬も勿論居る。なのでHCUのカーテンはずっと閉じられたまま、許可無し面会は謝絶という特別なお触れが出された。

「ここって試合観れねえの？」

こんな状況でも一番はバレーボール。無理を言ってパソコンを用意してもらい、イヤホンでの観戦を許可された。
画面越しに戦っているのは昴くんの大切なチームメイト。テンション上がって声上げないでね、と事前に注意していたにも関わらず、未来を担う【NEXT4】と称される面々が活躍すると勢い余って声を出しそうになったり。いつでもバレーが一番ってどうなのよ。
連戦2日目の試合も勝ってヒーローインタビューでは昴くんの事が触れられると、少し気恥しそうにしながらもその瞳は絶対そこに帰ってやるという未来に向けられていた。