ささえあい。 (ページ6)

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昴くんが搬送されるなり緊急オペが始まった。
待ち時間にスタッフさんに自己紹介をしたが、それは最早、カウンセリングに近かった。今回に至るまでの兆候は見られたのか、あなたのせいではないから自分を責める事は無い…でもどれも、安心材料にはならない。
予兆は何も無くて、昴くんの身に何が起こっているのか、それは担当医にしか分からない事だった。オペが終わる前に昴くんのご両親も到着した。私も知っている優しいお二人だが、今日だけは顔が強ばっていた。凄く分かります。

長時間の緊急オペが終わると、担当医から昴くんは持病があったと衝撃の事実を知らされた。
今は安定しているが、どうなるか分からない。
そんな曖昧な回答しか得られなくておばさんは泣き崩れ、私は目の前が真っ暗になった。その後の話は耳に入って来なくて、世界が終わったように感じた。

「寺島さん」

総合受付の連なるベンチに座り、少し正常になった頭に入ってきた声は柳田さんのだった。
試合…終わったのか。

『…んで、私…気付いてあげられなかったんだろう』

掠れた声が嗚咽混じりに出てくる。正気に戻ったと思えば今まで止まっていた涙が溢れてくる。
どうして、なんで、その次に出てくるのは…ごめんなさい

『ごめっ、さ…ごめ…な…っ！』

「…悪くないよ、悪くない」

優しく抱き締めてくれる柳田さんの腕の中で子供のように泣きじゃくった。本当の意味で冷静になれたのはそれから後の事で、柳田さんが聞いた事を改めて教えてくれた。
一歩間違えたら即死らしかった。それでも、あの高さからの落下だからネットが緩衝材となったとしても足首の骨折は免れない。スタッフさんと監督と相談して「肩の不調と足首の骨折で戦線離脱」と公表する事になった。

『治る、んですか』

「…分かりません」

今は安定しているが、どうなるか分からない

同じ事を言われた。
それがハッキリしなくて、もしもの事しか頭に浮かばなくてまた視界が歪んでいく。こんな時、楽観的な彼のようにプラス思考になればどれだけ心が軽いだろう。でも私はマイナスな事しか考えられない。

『昴くん…』

また子供のように名前を呼び続けながら涙を流した。

『…っ…昴くん、今は』

「ICUです。今度はHCUに入るって」

お願いします神様、どうか昴くんを助けて下さい。私はどうなってもいいので…昴くんだけは助けて下さい…
覆い被さるような柳田さんの手の中でギュッと自分の手を握り締めた。