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46 柳田side ページ48

「俺が大丈夫じゃない」

アルコールを飲むと寂しくなるっていうのはこういう事か。身を持って実感するとは思わなかった。次の大会が終われば俺はドイツに行ってAちゃんは日本に残って、今までみたいに急にご飯に誘う事も出来ない。そう思うと急に寂しさとかそれ以上にドロドロとしたものが溢れて来て、柄にも無いような事をしてしまった。

「カッコ悪ぃ…」

あんな事して…呆れたよな。

『酔い、醒めた?』

「あ、うん」

風呂上がりのAちゃんを見るのは初めて。ジャージ姿にしっとり濡れた髪の毛、酔った時の赤みとは違う火照った頬…あぁ、こんな姿、昴さんは見慣れた光景だったんだ。やっぱ適わねえな…

『お水飲んでよかったのに』

「…うん」

俺、やっぱりまだ昴さんには勝てねえのかな。実業団に入ってすげー良くしてもらって、俺の憧れの追い越したい先輩…敵が強過ぎるって。

『…眠たい?』

「…うん」

あぁ…そういえばさっきすげー心臓の音してたよな、俺。あ、Aちゃんもか。いやでもAちゃんのはアルコールのせいだ。俺の方がすげー余裕無くてやばかった。寂しくなって、昴さんに負けてんのか、負けたくねえって…

『寝る?』

「え?」

『え?』


え?


「ごめん、何?」

やべ、全然聞いてなかった。

『…明日もあるから、もう寝る?』

少し固まったAちゃんはそう言った。時間はいつもの就寝時間より少し遅め。一人部屋のベッドはセミダブルで2人で寝るには丁度いい、もしくは少し足りないくらい。そこで、好きだけど付き合ってもいない女の子と寝る事になる…色々大丈夫か?でも、少しでも意識してくれたら俺の勝ち。頑張るからって公言したし。Aちゃんにはそういう風に見てもらいたい。

『それともまだ酔ってる?お水飲む?』

髪の毛はまだしっとり濡れている。乾かす前に俺の心配とか…あぁ、もうどうにかなりそう。大丈夫じゃないかも。彼女でもないのに、こんな些細な事でさえも愛おしく思ってしまうんだから重症だ。

「それより髪の毛乾かさないと。風邪引くぞ」

『うん、やるよ。でも…』

「ドライヤー」

『…はい』

「持って来て」

しょぼんとなったAちゃんは、今度はきょとんとした。そういう所も可愛い。

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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時

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