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今シーズンの大きな大会はワールドリーグ。今回の合宿もそれに向けてのものだった。国内合宿が終われば、イタリアはナポリで開かれるベスビオカップに出場する為に現地で最終調整の合宿を4日間行う。
私、初の海外です。

『石川くんの行くイタリアだね』

「まあ、前に短期留学で来た事はあるんだけどね」

『そうなの!?』

「それでイタリアにしようって決めてたんだ。卒業したらプロになるって決めてたから」

『そっかー、人生設計が出来てるんだね』

「そこまで大それた事じゃないと思うけど…それに俺、イタリア語あんま喋れないしね」

『え!?』

嘘でしょ!?喋れると思ってた!

「授業も無いから独学。まだほんと、ちょっとしか喋れないからヤバい」

選手の皆に時差ボケは見られなかった。それどころか皆、試合に向けて気合いが入っている。
これは移動のバスに乗る前のお話。皆で乗り合わせる隣の座席には他のスタッフではなくマサさんが座った。

「最近、祐希と仲良いね」

『来年から一人暮らしだから、料理とか教えてるの』

「…ああ、イタリアね」

この合宿が終わった翌日にはベスビオカップが控えていて、それにもイタリアは参加する。参加国はあとアルゼンチンだけで、3チームの総当たり戦で順位が決まる。

「実は…俺も海外に行く」

『……』

それは石川くんの時みたいに飛び抜けて「凄いね!!」なんて言えるものじゃなかった。
マサさんが海外移籍をするのは事前に知り得ていた情報にも関わらず、本人の口から聞くのは心に突き刺さるものがあった。
マサさんは一番付き合いが長くて本当に頼りになるお兄ちゃんで、これまでも幾度となく助けてもらった。そんな人が離れていくのをいざ目の前にすると、胸がどくんと大きく跳ねた。

「まあ俺はドイツだけど…Aちゃん?」

『あ、うん…ドイツかー、そっかー』

代表招集日に知り得た情報なのに何でこんなしらばっくれてるんだ私は。

「…やっぱり常日頃から海外の壁っていうものに慣れておきたくて」

ずっと隣にいたマサさんが突然居なくなる。そこまでは言ってないけど、心の中に穴が空く、昴くんの時に感じたそれに近い現象が起きていた。

『で、でも、今もさ、私は東レに居てマサさんはサントリーに居て会わない時もあったし、こうやって龍神で呼ばれたら会えるもんね!』

「え…」

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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時

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