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『!!』

って、何をバスの中で言ってんだ私は!!!
マサさんもそこまで考えてる訳じゃないのに私は何を口走ってるんだ!マサさんの彼女でもないのに何出しゃばってるんだ私は!そりゃぽかんとするよ、私のわがまま言ってどうするの!!ってか何で口に出てたの!?

「…昴さんが背中を押してくれたんだ」

『…!』

「面会ギリギリに行った日あったでしょ。俺だけ呼ばれた時、海外行けって言われてさ。その時もちょっと海外とか、意識はしてたんだけど、その一歩が踏み出せなくて」

昴くんが…何故だろう、昴くんが、と言えば何でも私は納得するものらしい。それ程までにあの人がもたらすものは大きいようだ。
私がカウンセラーとしてここに居るのも、マサさんが海外に行くのも…まるで自分は長くないと分かっていたみたいじゃないか。

『ずるいね…昴くん』

「…そうだね」

私達の間に微妙な空気が流れた。

『マサさん』

いつの間にか静かになっていたバスの中に、スタッフさんから「そろそろ到着するから起きろ」と声が掛かった。次第にゴソゴソと物音がそこかしこから聞こえてくる。私が肩を叩いて声を掛ければマサさんは眺めていた外からこちらに視線を移した。

『ドイツ語、勉強しなきゃね?』

少しだけマサさんは目を見開いたけど、またいつもの表情に戻って「そうだね」と優しく返してくれた。
私にマサさんをどうこうする権利は無い。それは昴くんもそう。でもマサさんはドイツ行きを決めた。行こうと決めていた事なんだ。それは石川くんのイタリア行きと同じで、海外で経験を積んで龍神NIPPONというチームに貢献する為の、個々のスキルアップの為…だから私はサポートに徹する。

「Aちゃん…俺にも、料理教えてくれない?」

『…うん!』

出発するその日は、ちゃんと笑顔で見送ろう。
今、こうやって笑えているんだから。

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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時

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