ささえあい。 (ページ2)

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「日本の宝・井上の強烈な一本で試合終了ー！！」

「最高の一本でしたねー！」

バレーボールの全国放送で大きな活躍を見せたその人は、私がよく知る人で私の一番大切な人で大好きな人。

日本の宝・井上昴

春高バレーでその頭角を現した彼は勢いそのまま五輪日本代表、そしてV1リーグのチームに所属し19歳の若さでグラチャンバレーの最優秀選手賞にも選ばれたバレーに愛された逸材。私が昴くんの試合を観に行くのはよくある事で、録画もばっちり逃さない。

『ふふ、日本の宝だって』

「この前、生で観てんじゃん。それより今日は折角ゆっくり出来るんだからさ、俺にかまってよ？」

『でも昴くん、明日はまた試合でしょ？それに観てたのは別の試合』

鮮烈なデビューを果たしたらしい昴くんは今、行われているワールドカップでほとんどの得点に絡んでいる。らしいと言ったのは、その当時はまだ出会っていなかったから。全部、昴くんから教えて貰った事だ。

「じゃあ俺の事はどうでもいいんだ」

『そ、そんな事無いよ！明日の試合の為に観たいかなと思って』

言葉だけをとれば不貞腐れているように捉えられるが、昴くんは飄々としていて意地悪な言い方をよくする。今回もそれだ。横から細身ながらもがっしりとした腕に抱き寄せられ、かまってくれと言わんばかりに逃げ場を無くして私の頭に昴くんの頭が乗る。

「大丈夫。明日もAが応援に来てくれたら勝てるから」

『もう…』

それは最早、常套句になってきた。でも実際そうで、私が応援に行くと9割の確率で試合に勝つし、勝たなくてもスーパープレーを連発するから、昴くんはよく私を「勝利の女神」と言ってくれる。だから私ももしかしてそうなのかなと、昴くんのいつもの調子の冗談に乗せられてしまう。
私と昴くんがお付き合いしているという事はほんの数人にしか言ってない。だから私が行くのはお忍びで、試合が終わった後も一緒には帰れない。昴くんは大丈夫だと楽観的な事を言うけれど仮にも日本代表の「日本の宝」と称されるような人だ。ネットの海は怖いし、昴くんに何かあったらたまったもんじゃない。私は陰ながら支えるだけだ。だからかな、二人きりの邪魔されないこの貴重な時間は昴くんがいつもより可愛く見える。歳上の彼に「可愛い」なんて言うと寝かせてくれないくらい意地悪をするから絶対言わないけど、こんな可愛い昴くんも好きだから私もついつい甘えちゃう。

「好きだよ、A」

『私も好きだよ、昴くん』