口から伝わる【チェンソーマン】 (ページ5)

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早川side
あの日は久しぶりのマキマさんとの任務だった。無事に悪魔を倒した帰りにアイツに会った。
急にマキマさんがすんすんと急に匂いを嗅ぎだして帰る方向とは違う所に歩き出す。その様子を見て、乗りかけていた車を慌てて施錠して数m先の角を曲がったマキマさんを追いかける。

角を曲がるとそこは血の海だった。
おそらく出血の原因である悪魔だった塊は皮を削がれ体を切り刻まれて体液という体液を吐き出していた。あまりの凄惨な状況に口を鼻を覆う。
マキマさんは靴が濡れることも気にせずこの現況を作った男に話しかけていた。
明らかに只者ではない自分より年下に見えるその男は大きなくりくりした目にとふわっとした髪、白い頬に点状の返り血をつけたままマキマさんを不思議そうに見ているのが記憶にある。

あのマキマさんが興味を持つなんて珍しい。
そう思った。

「じゃぁ行こっか」

いつの間にか話がまとまっており、俺は得体のしれないこの男を連れて行く事を拒否したが希望は通らず。

「あ、そう。君の名前。聞いてなかったね」
「……百目鬼A」

名前を聞いた後、マキマさんはくるりと振り返り近寄って来て、俺から車のキーを奪う。

「頼んだよ。アキ君」
「何で」
「彼は凄い戦闘センスだよ。見て、全て血抜きして身体の組織を切り刻まれてる。あんな芸当出来る人いる？」

早川はごくりと生唾を飲んでまともじゃないとゆっくりと向こうにいる男を見た。

「…分かりました」

俺はマキマさんの命令には逆らえず頷いて見送った。
とりあえずこの男を仕方無しに自分の家に連れて帰る事にした。
その道中に百目鬼が殺し屋あがりである事を知った。だからあの現場か。

しかしこいつと関わるうちに自分の思っている殺し屋のイメージとは全く違っていた。
こうなんていうか礼儀もあって、お礼も言えるし。血に飢えている様子もない。街ですれ違ってもフツーの青年としか見えない。
着ていた服は驚くほど血を吸って重く冷たかった。そりゃ身体も冷えるな。当の本人は呑気に風呂場で鼻歌を歌ったり、なんだか放っておけない。

今も目の前で自分で濡らした床を拭いてるがもともとの頭が濡れているので濡れては拭いて、拭いては濡れるのイタチごっこである。
俺が頭を拭く事を手を貸すとおとなしく頭をこちらに預けている。ここで俺が殺そうとしたらどうするんだ。そんなことを頭で考えた途端にビリビリと肌が粟立つ。