沖田と僕 ページ11
Aは少しくすぐったい気持ちになる。
ここはなんだか暖かい人ばっかりだし、僕は本気なんだけどな…。
「気をつけて帰れよ」
土方はひらりと手を振って自室へ戻った。Aは近藤さんにも1言行ってから帰ろうと思ったがガチャと鈍い音が聞こえたかと思うと頭の後ろに冷たいものが当たる感触があった。
「(いつの間に?!)」
「誰だ。お前盗人かィ」
Aは両手を上げた。
「近藤さんの客です」
「近藤さんの?」
そういうと銃は降りたがパッとAの目の前に、くりくりとした赤い目の栗色頭の男の子と目があった。女?多分お互いがそう思った。
「近藤さんの客人なんて聞いてないですねィ」
「えっと…(そう言われてもな)」
沖田は親指と人差し指の間に顎を挟んでうーん。とAを見定めていた。
近藤さんがこんなきらきらした女の子と知り合いになるハズがねェ。きっとなんかの詐欺でィ。しっかし、現行犯でもないしどうしたもんかねィ。
「何してる。総悟、A?」
二人の後ろから土方が声をかけた。
「A?Aってなんでィ?」
「あ、僕の名前です」
「総悟。またなんか吹っかけようとしてるのか。止めとけ。ほら、Aも帰れ。いいから」
土方はAと沖田の様子から、沖田が足止めしている事を察して、Aを帰路に着かせるために背中を押して玄関まで見送ってやる。
「あ、ちょっとまだ話が終わってねィ」
「いいんだよ、お前は話さなくて。」
「副長、いたっ押さないでください!」
「副長?」
Aが土方を副長と呼んだ事にピクリと眉を上げた沖田。土方はその沖田の嗅覚の良さに頭を抱えた。
「A、副長じゃねーぞ」
「あ、すいません。つい」
「なんでィ仲間はずれかよィ」
沖田は土方のリアクションを見て何かあると画策し、やいやいと文句をいいながらも土方と共に奥へと戻っていった。
Aはポリポリと頬を書きながら嵐のような1日に唖然としていたが帰路につくために1歩踏み出した途端にブチッと鼻緒が切れて地面にダイブした。
「いたた…」
「Zzz」
パッと視線を上げるオレンジ色のアフロで鼻より下は黒い布で覆われていて、首にはマフラーのように布を巻いている男が手を差し伸べていた。
「あ、すみません」
Aは素直にアフロの人のぐっと手を掴んで起き上がった。足元の靴をもう一度見るとぷっつりと紐が切れ使えない事を確認しただけとなった。
「……zzz」
「お手を貸してくださって、ありがとうございました」
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作者名:アバランチ | 作成日時:2022年7月16日 23時