夜明けが希望でありますように (ページ10)

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影浦達がいるのに水上はいなかった
後ろにポツンと空いた席が1つ残り
少しだけ寂しくも見える
でも水上は予想通り妹を連れて教室に入ってきた
連れてというよりついてこられてと言う方が正しいだろう
いつもと同じように教室に入っては
水上に引っ付いてあの高い声で名前を呼ぶ

あぁ、まただ

この空間に居たくないと思ってしまう
そう思った時の私の行動は速かった
バックを持っていつの間にか教室を飛び出していた
影浦の叫ぶ声が廊下に響いて聞こえたけど
そんなの気にしていられるほど
私に余裕なんてものは無かった
あの声を聞きたくなくて
ただ聞こえない場所に行きたくて
好きだと思う人にすら背中を向けて

私は逃げた

教室の中は少しだけ混乱の中にあった
HRがそろそろ始まるというのに
雨宮は自分のバックを持ち
教室の前の扉に向かって走り出した
一瞬だけ見えたその横顔が酷く苦しそうに歪んでいた
目の前の鋼と穂刈は驚いているようで
固まってしまっていた
「雨宮！」と叫んだ時にはもう遅く
彼女の足音すら聞こえなかった
追いかけるため椅子から音を立てて立ち上がった
勢いのついた椅子はそのまま水上の机にぶつかった
反射的に振り向いた時そこに水上はもういなかった
残された雨宮の妹も困惑しているのか
水上がいた場所に視線を向けたまま固まっていた
教室の外の廊下を
軽く走って行く水上の姿がチラリと見えた
雨宮の元へと行ったのかは分からないが
あの水上が少し焦ったような顔をしていた
今までなんとなく感じていた雨宮への違和感が
確かなものになっていく気がした